暴行を受け、その次の日に警察に被害届を出した直後に今度は銃で撃たれるという予期せぬ最期は、わずか15歳のファベルさんにとってさぞ無念だったことだろう。

 地元メディアによれば、病院での検死でファベルさんの体からは5発の銃痕が見つかったという。なんともやり切れない事件だ。

「容疑者2警官は獣」と国家警察長官

 この事件は、「警察官にレイプされた15歳の少女、警察官が口封じで射殺」としてフィリピン国内で大きく報道されると、たちまち大きな反響が起こった。

 まず南イロコス州のライアン・シンソン州知事は同州警察に対し「ごまかしやうわべだけの捜査は許されない」と警告し、その上で警察による捜査だけでは公正と中立性を欠くとして「国家捜査局(NBI)」による独自の捜査を要求。「ファベルさんと残された家族への正義の実現」を訴えた。

 フィリピン国家警察のアーチ―・ガンボア長官は殺人、性的暴行、猥褻容疑で拘束されている2人の警察官に関して、「彼らは制服を着た人間ではなく、人間としての心も慈悲もない獣。同情の余地などは全くない」としたうえで「もっとも厳しい処罰が科されることになる。残る生涯を刑務所で過ごすべきである」と述べた。フィリピンでは2006年に死刑が廃止されており、現行法では終身刑が最高刑となっている。

 さらに大統領府のハリー・ロケ報道官も「大多数の善良な警察官の中には悪い腐ったリンゴが交じっていることもある」と指摘して2警官を厳しく指弾した。

 ユニセフ・フィリピン事務所も「犠牲者とその家族に正義が行われることを求め、未成年や児童の保護に政府や警察は責任を持ち、関係する事案には迅速に対応することを要求する」との声明を発表した。

 国家警察女性未青年保護センターの統計によると、今年3月16日から6月16日までの3カ月間に女性や児童、未成年者が被害者となって捜査した事件は5049件あり、3628人が逮捕されているという。