民間機が飛行中に収集した気象データは天気予報に利用されている
この問題との関連が推測されるのが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響による気象観測データの世界的な不足だ。WMO(世界気象機関)は4月9日、天気予報や気候変動を観測するためのデータの不足を指摘しているが、その原因は、各国・地域での入境制限にともなう民間航空機の急激な減便だ。
気象関連のデータの収集先は、気象衛星をはじめ、世界に点在する1万以上の観測地点や海洋ブイ、さらには航行中の民間航空機や船舶からも集められている。加えて、ラジオゾンデと呼ばれる観測機材のついた風船を高さ3万メートル程度まで各地で同時にあげて上空の大気を観測することもある。
集められた気象データのコンピュータ解析などをもとに天気予報が行われるが、軍用など少しでも高い精度が求められる予報などにはなるべく大量のデータを用いている。
そうした中、航空機は、人や物の移動だけでなく、高度や緯度経度別の気温、風向のデータも収集でき、ジェット気流、乱気流の情報など、地上に観測点のない域内の情報を埋める重要な存在なのである。
コロナによる減便で民間機からの気象データが激減
ところが、新型コロナウイルスの影響で民間航空は極端な減便、運航停止に追い込まれ、1日平均10万便あったという運航が3万便程度に激減。これらのデータが得られなくなったばかりか、観測機材の修理やメンテナンスなどにもコロナの影響が出ていた。要するに、気象データが極端に少なくなっていたのだ。
従来WMOでは1日80万件もの航空データを収集していたというが、この間は20万件程度に落ち込んでいたという。