日本の天気予報に使用されるデータは気象衛星「ひまわり」をはじめ、地上観測装置によるデータが主体で、航空機からの情報への依存には全体の1~2%程度とされるが、高度な気象情報が必要となる軍事用途では、長期予報の精度が最大15%も落ちるような状況を放置することは危険だ。

 6月16日には北朝鮮が開城(ケソン)の南北連絡事務所を爆破している。引き続き、ミサイル発射など軍事的な動きの活発化が懸念されるなか、周辺で航空兵力などを展開する米軍が、翌17日に不足する気象データを独自に収集しようと動いても全く不自然でない状況だった。

日本の上空を支配する在日米軍

「航空法違反ではないのか」

 宮城県のケースでもこうした指摘は出ていたが、日本の空における米軍の権限の大きさを知っていれば、宮城県が球状飛行物体の問い合わせ先として「在日米軍は念頭になかった」ということ自体、危機管理姿勢のもろさを象徴している。

 首都圏上空の「横田空域」や中四国上空の「岩国空域」などはよく知られているが、日本が独立を回復した1952年制定の「航空特例法」には、飛行禁止区域をはじめ制限飛行速度や最低高度など日本の航空法上の主要なルールに関し、米軍機、国連軍機にはそれらが適用されないことが明記されている。

 宮城県のケースでは仙台管区気象台などに市民から「あれは何か」とする問い合わせ電話が殺到し、ワイドショーなどでも話題になったが、同様の球状飛行物体は16日、岩手県内でも目撃情報があり、福島地方気象台に地元住民からの問い合わせが相次いでいた。また昨年11月に鹿児島県内でも目撃されたとも。

 ネット上では「UFO説」をはじめ、「北朝鮮の風船爆弾」などさまざまな説が乱れ飛んでいるが、国内各当局とも「詳細は把握できていないが危険物ではないと判断した」という、なんとも矛盾した説明をするばかり。軍事アナリストらは、「そうした状況からみて、米軍のラジオゾンデによる気象観測データの収集だとみるのが一番妥当な推測」だとしているのだが、在日米軍司令部に対し、確認、取材自体行っていない自治体幹部や現場記者の知識不足が、騒ぎをいたずらに大きくしてしまった可能性も指摘されそうだ。