逮捕権、公訴権を持つKPK捜査官は、現職閣僚、国会議長、国会議員、官庁の幹部職員、州政府高官、大使、政党要人といった“大物”を次々と逮捕した後、きっちり起訴して、その大半は有罪判決を受けて服役してきた。

 ところがその厳しい汚職追及に政党や国会議員が「危惧」を抱き、「KPK改正法」を議会に提案して、迅速審議で2019年9月に可決してしまった。

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 当時、ジョコ・ウィドド大統領は「議員提案による法案の国会審議に大統領が介入する余地はあまりない」と、国会や政党の反発を恐れて、大統領非常権限を行使することを躊躇していたと言われている。

(参考記事)インドネシアで民主化「後退」の兆し
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 その結果KPKは、新たな委員長に南スマトラ州警察本部長だったフィルリ・バフリ氏を迎えて、陣容を刷新し、新たに設置されたKPK監査評議会の正式発足を経て、2019年12月から実質的な新体制でのスタートを切っていた。

 しかし新体制発足から約100日のいわゆる「ハネムーン期間」を終えた2020年3月にICW(汚職監視団)は、「フェルリ体制の新KPKは捜査や人事の透明性、独立性に大きな問題があり、もはや国民の信頼を失っている」と厳しく批判、3カ月の時点ですでに危惧していたKPK弱体化が現実のものになりつつあった。

与党汚職摘発も不完全燃焼

 そんな国民のKPK新体制への疑問を払しょくするかのように、KPKは早速1月8日、「中央選挙管理委員会(KPU)」と最大与党でジョコ・ウィドド大統領の支持母体でもある「闘争民主党(PDIP)」の政治家よる贈収賄事件の摘発に乗り出し、KPUのコミッショナーを収賄容疑で逮捕した。しかし、贈賄側のPDIP政治家に関してはシンガポールに逃走、密かに帰国した後も消息不明状態で、現在に至るまでも逮捕どころか生存確認すらできていない。

(参考記事)インドネシア、法務人権相の「人権無視発言」の中身
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