「製造業」や「サービス業」、「小売業」など各業種で感染ペースは鈍化
次に、従業員の感染を業種別に見た際、最も感染者が多かったのは「製造業」で129社。次いで「サービス業」が64社、「小売業」が45社となった。このうち、最も報告件数の多い製造業では、自動車や機械、化学、食品など幅広い分野で感染者が発生。バックオフィスや工場などで感染報告があったという。
このような中で、緊急事態宣言の発令により、多くの企業が在宅勤務制度を導入。経済同友会による参加企業250社を対象とした4月の調査では、製造業のうち、国内事業所全体の出勤者を8割以上削減させた企業は約3割、また、5割以上に削減させた企業は約7割にのぼった。
一方、サービス業では、各社が従業員の感染リスク低減に向け、テレワークが可能な部署の在宅勤務制度の導入や、生産部門のローテーション勤務導入などの策を講じた。5月の大型連休前後からは、一斉に休業措置をとった企業も多かったという。また、接客を伴う感染リスクの高いスーパーや飲食店では、入店制限やレジ待機中のソーシャル・ディスタンスを徹底。このほか、飛沫防止ビニールの設置やイートインスペースの閉鎖など、感染対策を強化した。これら一連の取り組みが従業員の感染抑制に貢献したと言える。
事業継続と従業員の健康管理の両立が今後の課題に
緊急事態宣言が解除され、東京都が独自で発動していた「東京アラート」も6月12日に解除された。経済活動は徐々に活発化し、街中の人手も増加傾向にある。こうした中で、感染リスクの再燃が懸念されており、実際に製造業や小売業では緊急事態宣言解除後に罹患報告のケースもみられている。これらの業種はいわゆる「3密」を満たしやすく、感染拡大防止に向けて、勤務体制の見直しといった抜本的な対策が急務となっている。
新型コロナウイルス感染症との共存が求められる新たな社会「Withコロナ」に移行した現在。十分な治療法や防疫手段が限られる中で、従業員への感染を完全に防ぐことは現段階で難しく、各社とも引き続き感染リスク対策に気が抜けない状況は続きそうだ。その中でも、自社の事業を継続しながら、従業員の健康の安全をどう確保するか。今後は、事業継続と従業員の健康管理の両立が経営で求められるだろう。
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