連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第5回。PCR検査で陰性なら安心? 検査を盲信することの危険性と、ウィズコロナ時代のひとりひとりの行動指針を讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)が語り尽くす。

 それにしてもやっかいな病気です。

 6月某日。私が勤める自治医科大学附属さいたま医療センターで、「再陽性」が出ました。新型コロナウイルス感染症の陰性が確認されていた患者が再度陽性となったのです。

 その患者は、発症後37日で陰性を確認しました。2回のPCR検査を行い、2回とも陰性だったのです。しかも、肺に近い気管支からの吸引で検体を採取するという比較的感度の高い方法での陰性でした。

 ところが、陰性確認後も多臓器不全が改善しませんでした。原因は何か、稀な病気も含めさまざまな可能性を考え、それに応じた各種の検査をしましたが、どれにもあてはまりません。もしかしたら患者の免疫が新型コロナウイルスをコントロールできず、ウイルスが肝臓や腎臓で暴れているのではないか? そこで、もう一度PCR検査をしてみたところ陽性だったのです。陰性を確認してから2週間後のことです。