自治医科大学附属さいたま医療センターのスタッフたちによる打合せの様子

「このままでは本当にまずい!」――自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長の讃井將満医師が語る新型コロナウイルスとの戦い。連載はセンターが迎えた最大の危機からスタートする。集中治療の現場では、そのとき何が起こっていたのか!?

 明けない夜はない・・・。

 4月11日、新型コロナウイルス感染症の新たな陽性者が全国で700人を超えました。その前日、埼玉県では初めて新規陽性者が50人を超えました。4月7日に緊急事態宣言が発令されて以降も感染の拡大は進み、感染爆発が危惧されていたその頃、集中治療の現場も危機的状況を迎えつつありました。置かれているのは真っ暗な闇の中でしたが、夜が明けることを信じて前へ進むしかないという心境でした。

 3日前の4月8日、私が勤務する自治医科大学附属さいたま医療センターでは、一般病棟を2棟、計100床を閉鎖して、緊急で重症者のための6床の新型コロナ感染症専用ICU(集中治療)病棟と10床の中等症用病棟を作りました。2月の段階で、感染エリアと清潔エリアのゾーニング(区分け)を徹底し、重症者(正確には重症1人、中等症2人)を受け入れる体勢を整えていたのですが、感染の拡大にともないそれをさらに拡充したのです。

 当病院は厚生労働省の定める感染症指定医療機関ではありません。それなのになぜ重症者を受け入れたのか? それは、新型コロナウイルスの診療には、質の高い集中治療が必要だからです。

 新型コロナウイルスは肺だけでなく、心臓、腎臓、肝臓などの合併症を引き起こすので、重症患者の全身状態を総合的に管理する集中治療専門医の役割が重要となります。たとえば心臓の手術は心臓外科専門医が行うと成績が良いのと同様に、重症患者の診療も集中治療専門医が担当する方が成績が良いのです。しかし、感染症指定医療機関と集中治療が強い病院はイコールではありません(東京には都立墨東病院をはじめ両立する病院も多数ありますが、埼玉県内にはほとんどありません)。とくにECMO(エクモ。体外式膜型人工肺)に熟練した病院は非常に限定されています。