「先祖代々の墓」はどこまで伝統的習慣か?

「イエ」を単位とした「先祖代々のお墓」や「お墓参り」はどちらも日本人にとってはなじみのあるものだ。納骨、法要、お彼岸には寺を訪れ、「○○家」と刻まれた「四角い石」の前に家族、親族と集う。黒い服を着て、お墓をきれいに整えて花や線香を供えて手を合わせる。理由や意味はよくわからないけど、「そういう風にするものだから」とやっている人も多くいるだろう。

 しかし、私たちはお墓について意外にもほとんど知らないのではないだろうか。長く続いてきた伝統的な生活習慣のような印象があるが、いったいどのくらい古く歴史があるものなのか。お墓の近現代史を学ぶため、これからのお墓と弔いについての考えるヒントを求めて気鋭の若手宗教社会学者、問芝志保さん(国立歴史民俗博物館外来研究員、聖心女子大学非常勤講師など)のもとを訪ねた。

 近代日本の先祖祭祀と墓制を研究対象とする問芝志保さんは、大学進学を機に茨城県に引っ越すまでお墓を見たこともお墓参りをしたこともなかったという。出身地である札幌では、墓地というのはほとんどが郊外にあるもので、そのためお墓を目にする機会がなかったからだ。

 にもかかわらず、テレビで先祖や亡くなった人に語りかけるお墓参りのシーンを見たり、お盆やお彼岸に家族で線香やお花を持ってお墓を訪れて手を合わせるという友だちの体験談を聞いたりすることで、「先祖を祀ることやお墓参りをすることは日本人にとって大事なことなのだ」ということを知っていった。人の常識やイメージは、実際に経験したことがなくてもメディアや伝聞を通じて作られていく、そのことを身をもって感じたという。

 日本人にとって先祖祭祀とはいったい何なのか。日本人の7~8割がお墓参りを行っているというが、当たり前のように行っている重要な生活習慣であるにもかかわらず、調べれば調べるほど分からない。いつから、なぜ先祖やお墓が大切にされるようになったのか。

 例えば、日本人はよく「古来、先祖を大事にして祀ってきた」と言われるが、実際には自分の4代前の先祖の墓がどこにあるのかよく分からない、という家はたくさんある。それでは4代前の庶民の先祖観やお墓の大切さとはどのようなものだったのだろう。いつから今のように先祖祭祀やお墓参りをするようになったのだろうか。歴史上ではほんの少し前のことなのに分からないことばかりだ。大学で宗教学を専攻した問芝さんは、その「分からないことばかり」の面白さに惹かれて「墓」の研究に没頭した。

 お墓と一言で言っても、死や宗教、家制度や家族、結婚、遺体の処理や埋葬、都市計画や衛生問題を含み、学問的にも宗教学、歴史学、社会学、民俗学など複数の分野にまたがる壮大なテーマだ。以下、日本の墓制の近現代史を問芝さんに解説いただいた。