韓国政府はビラ散布の団体を告発

 金与正氏が談話の中で、脱北者団体による北朝鮮向けビラ散布を激しく非難し、「ビラ散布を禁止する法律を作れ」と恫喝したことを受け、韓国統一部は「対北ビラ散布禁止法案(仮称)」を推進していることを確認したとの追従姿勢をとっている。

 北朝鮮の体制を非難するビラを散布する活動を行っているのは、脱北者の朴相学(パク・サンハク)氏が率いる「自由北韓運動連合」と、弟のジョンオ氏率いる「クンセム(大きな泉)」の2団体である。前者は先月31日、金正恩委員長を非難するビラやドル紙幣などを大型風船につるして北朝鮮に飛ばした。後者はコメをペットボトルに入れ北朝鮮に送ろうとしたが、地元住民の反発で失敗した。さらに前者は、朝鮮戦争勃発70年となる25日、100万枚のビラを飛ばすとも予告している。

 これに対し、統一部はこの2団体を南北交流法違反で告発し、両団体に対する政府の法人設立許可を取り消すと発表した。南北交流法は、物品を北朝鮮に搬出するには統一部長官の承認が必要と定めているが、これまで統一部はビラの散布を問題視したことはなかった。その方針を突如変えたのだ。脱北者団体はこれに反発、「金正恩委員長の頭上にさらに多くのビラを散布する」と述べている。

 与党議員は、北朝鮮がビラ批判から韓国への挑発を強化していることから、「ビラの無断配布への反発だ」「南北首脳間の合意事項が守られていないことへの積み重なった不満のようだ」などと述べ、ビラを散布した脱北者団体を批判している。さらに、「(互いを誹謗しないと合意した)板門店宣言を国会で批准させることを通じ、南北関係発展の新たな転機を作らなければならない」との考えを示す与党議員もいる。つまり、北朝鮮の要求に従ってビラ散布ができないようにし、北の翻意を促そうということだろう。

 しかし、北朝鮮は韓国の融和的な姿勢で態度を改めることはなく、韓国政府の毅然とした対応で北朝鮮を動かすべきとの意見もある。朝鮮日報は、京畿大学の南柱洪(ナム・ジュホン)教授のコメントを紹介している。

「2015年北朝鮮による木箱地雷挑発の際、韓国が自走砲で反撃するなど強硬な手段を取ると、北朝鮮の方から先に交渉を持ち掛け、謝罪の意向を伝えてきた」

「北朝鮮の強硬姿勢には譲歩ではなく堂々と対抗していく戦略も必要だ」

 ただ、当時は朴槿恵大統領であった。北朝鮮追従の文在寅氏にはとてもできないことだろう。しかし、北朝鮮への弱腰対応をしていく間に北朝鮮は一層の強硬措置を取って来るであろう。北朝鮮への対応で重要なことは、北朝鮮の狙いを看破し、挑発にスキのない対応体制を取ることである。