(朴 承珉:在ソウルジャーナリスト)
「私はもともと悪いことをする奴より、それを知らないふりをしたりけしかけたりする奴がもっと憎かった」
「(南朝鮮当局は)くずたちの茶番劇を阻止する法律でも作らなければならないだろう」
この激しい言葉は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の実妹の金与正(キム・ヨジョン)第一副部長の名義で4日発表した対南談話の内容の一部だ。
金与正氏に続き、統一戦線部も文政権を批判
5月31日、脱北者らが中心になる民間団体「自由北朝鮮運動連合」が、南北軍事境界線付近で、『新しい戦略核兵器を発射するという金正恩』というタイトルで、金委員長と北朝鮮政権を批判するビラ50万枚を大型風船で飛ばした。それに対して、金与正氏が文在寅(ムン・ジェイン)政権に向けて放った強烈な毒舌なのだ。
金与正氏の文政権に対する発信は、今年3月に続き、今回が2度目となる。今回の談話で「知らないふりをしたりけしかけたりする奴」は、文在寅大統領を指す。「なぜ脱北者団体が北朝鮮にビラを飛ばすことを防がないのか」と文大統領に直撃弾を飛ばしたのだ。また、「くずたちの茶番劇」は脱北者がビラを飛ばしていることを指している。金与正氏の発言は以前にも増して過激になっていると言えるだろう。
さらに金与正氏は、「南朝鮮(韓国)当局が応分の措置を取らなければ、金剛山観光廃止に続き、開城工業地区の完全撤退になるのか、北南(南北)共同連絡事務所の閉鎖になるのか、あってもなくても変わらない南北軍事合意の破棄になるのか、しっかりと覚悟はしておかなければならない」と警告した。
金与正氏の3月の談話は、朝鮮中央通信を通じて発表したが、今回は異例にも北朝鮮市民もみな読む労働党の機関紙・労働新聞に、『南朝鮮当局の黙認の下、脱北者のくずらが反共和国敵対行為敢行』というタイトルで掲載されている。そこには、文在寅政権を批判し、北朝鮮市民にもビラ内容を信じないよう注意するようにという意図もあると見られる。
この翌日となる5日には、統一戦線部が対南事業を総括する金第1副部長が(4日の)談話で指摘した関連指示を下したとし、開城工業団地にある『南北連絡事務所』を撤廃すると明らかにした。統一戦線部はさらに、「我々も南側が大変疲れるようなことをする準備をしており、これから苦しめようとしている」と圧力をかけている。
韓国に対する挑発を暗示し、威嚇したのだ。統一戦線部の発表を見ると、今後、北朝鮮のミサイル発射などを含め、さらなる別の形の挑発も予想される。