新型コロナウイルスをめぐり米中の情報戦は熾烈化している。
米中はすでに貿易、経済、技術などをめぐり激しく対立している。ポストコロナ時代においては、米中の全面的な覇権争いが、サイバー、宇宙、電磁波などの新領域を含め、地球規模で全面的に戦われることになるであろう。
このような激しい米中対立の背景には、核戦力を中心とする軍事力の相対的な変化がある。
中国は、江沢民政権以来一貫して、際立って核戦力の増強近代化に力を入れてきた唯一の核保有国である。その結果、近年米中の核戦力の相対戦力格差は急速に縮まってきている。
それに対し危機感を持ったドナルド・トランプ政権は核戦略、核政策を大きく転換し、核戦力の増強近代化に乗り出している。
トランプ政権の対中認識
中国の近年の核戦力その他の戦力整備に対し、米国、特にトランプ政権は将来、米国の世界的覇権を脅かしかねない最大の脅威と認識し、核戦略と核戦力の再構築を図っている。
米トランプ政権は、2018年の『国家防衛戦略(NDS)の要約』において、「世界的な安全保障環境は、自由で開かれた国際秩序に対する挑戦と、長期にわたる戦略的な国家間の競争の再来という特徴を持つ」としている。
なかでも、「米国の繁栄と安全にとり中心的な挑戦勢力」となり、「長期的な戦略的競争者」となるのは、『国家安全保障戦略(NSS)』において「修正主義大国」と分類された、「権威主義的モデルに合わせて世界を形成しようと欲している中国とロシア」であると、明確に規定している。
特に中国については、「インド太平洋の秩序を自国に有利なように再編するために近隣国に対して、軍事力の近代化、影響力行使作戦、略奪的な経済政策などを利用して、強圧的な姿勢をとっている」として、その近隣国に対する強圧的な姿勢に警戒を強めている。
しかしそれだけではなく、さらに「中国は、国家一丸となった長期戦略により、経済力と軍事力の優位を強め発言力を増すにつれて、近い将来にインド太平洋での地域的な覇権を求め、やがては米国に代わり世界的な卓越した地位を占めるために、引き続き軍事力の近代化を追求するであろう」と指摘している。
このように中国は、近い将来にインド太平洋での地域覇権を目指すにとどまらず、やがては米国に代わり世界的覇権国になることを、軍事力近代化を通じて追求し続けるであろうと予期し、警戒を強めている。