政府への信認が失われれば1万円札は紙に

山本一郎

 ただ今はそれどころではなくて、アメリカのように、新しい価値を生み出すというよりも責任追及が先に来ています。「中国が悪い」みたいな。次の経済がどういう形で成立させるかという話には全くと言っていいほどなっていない。

 ウォーレン・バフェット(世界的な投資会社、バークシャー・ハサウェイの創業者)やビル・ゲイツ(マイクロソフトの創業者)のような時代を牽引してきた人たちでさえ、次の時代に何が起きるのか、いまだ読みかねているように見えます。100年近く右肩上がりであったダウ平均は有史以来の急落を見せました。過去の経験で未来を読み解くことができないのです。

 じゃあ、コロナによって失われたトラスト、それは対人間もそうだし、対資産でもそうですが、それをどうやってつくり上げていくのか。それが今一番求められていますが、そこが全く見えてないので何に投資すればいいのか分からない。どうしても消去法の投資になってしまいます。

藤野英人

 もともと1万円札の原価は印刷代や手間代を入れても20円ぐらいでしょう。それが1万円の価値を持っているのは、政府に対するトラストがあるからです。もちろん、今は1万円札と日本政府へのトラストはあるけれども、このまま政府への信認が失われれば、1万円札は紙になる。

 一方、資本主義経済を成り立たせるためには貨幣が必要です。では、政府が発行する貨幣への信認が失われたときに何に向かうのか。

山本一郎

 それこそ缶詰のような、実需を裏付けとするものかもしれない。

藤野英人

 実は、缶詰を少しずつ備蓄していこうと思っています。単なる投資ということだけでなく、ある程度保存が効いて、タンパク質を摂取できるものを持っておく必要があると思うから。これから、お金があっても買えないという時代が来るかもしれないと思うんですよ。

山本一郎

 来そうですよね。

藤野英人

 山本さんの周りでも、僕の周りでも、成功してお金を持っている人が山ほどいるじゃないですか。

山本一郎

 いますいます。

藤野英人

 その人たちがステイホームしているわけですが、家が広いと言っても東京だと300m2くらいで、グローバルで見れば全然広くない。

山本一郎

 むしろ狭い。

藤野英人

 かつ、自家用ジェットやクルーザーを持っていると言っても使えませんし、ハワイに不動産を持っていても行くことができない。

山本一郎

 意味ないですね。

藤野英人

 そうなってくると、資産の多寡が人生の幸せにあまり影響しなくなってくる。むしろ金を持っていても夫婦仲がメチャクチャ悪い人よりも、ファミリーが仲良く、子どもとの関係が良好な人の方が幸せなんじゃないか。

山本一郎

 そういう人、たくさん思い当たりますね(笑)。

藤野英人

 コロナによって、「幸せとは何か」ということが突きつけられるようになったと思うんですよね。

山本一郎

 そうそう。たぶん、それを今消化している最中なんだと思います。

──申し訳ありません。盛り上がってきたところですが、だいぶ長くなってきましたので、ここでいったん休憩しましょう。「藤野×山本」対談の2回目は5月25日に公開(予定)しますので、しばしお待ちください。