成人の30%が何らかの不眠症
もちろん、屋内にも光源はたくさんあります。
照明ももちろんですが、テレビやPC、スマホなどのモニターは明るいだけではなく、さまざまな情報が素早く交錯し、脳を活発に興奮させます。
特に最近のゲームは、画面の情報量も多いし、派手なアクションや爆発が頻発し、情報処理する脳にはかなりの負担をかけているでしょう。
現代では、成人の30%以上がなんらかの不眠症状を持っていると言われています(2)。現代人の生活スタイルを考えれば、それも当然のことなのかもしれません。
そして、それはあくまでベースの話であり、このコロナ禍でリモートワークを余儀なくされている人は、それがさらに悪化してしまう危険性があります。
もしかすると、テレビやPC、スマホを見る時間が純粋に長くなっているかもしれません。
それに加えて、テレビ会議にも落とし穴が潜んでいます。
明るいモニターを見続けるというリスクもありますし、設定時間も自由度がききすぎて、遅くなってしまうことがあるからです。
会議が白熱すれば、脳は活発に活動することになります。
「新しい問題点の対策を考えよう」とか
「あの人に言われたことがひっかかるな」なんて考えだすと、いつまでたっても仕事モードから抜け出せません。
生活リズムにメリハリがつかず、24時間、ダラダラと仕事中という状態になってしまいます。
つまり、リモートワークは、「照明」と「活動」の二重で睡眠に悪影響を及ぼす可能性があるのです。
また、「テレビ会議は普通の会議よりも疲れる」という人も多いと思います。
これにはいくつかの原因が考えられます。
明るいモニター越しで目が疲れることや、現実世界よりは視野の狭いモニターの中で、複数の人の表情などを同時に判断しようとして、脳に負担がかかりやすいということもあるでしょう。
また、視線が合わないこともストレスです。多くの人は、モニターかカメラを見ているので、本当の意味で視線が合うことはありません。そのため、現実の会議ではできていたアイコンタクトができず、言葉の裏にあるニュアンスをくみ取ったり、合意形成ができているかどうかの実感を得たりすることが困難なのです。
それが不安感、疲労感につながっている可能性は十分あります。
リモートがパワハラを助長?
テレビ会議には、もう1点気になる点があります。それは何かというと、立場が上の人が「どうせリモートワークなんだから、会議は夜でも日曜でもいいでしょ」と考えれば、「パワーハラスメントの温床」にもなりえるということです。社内のようなオープンな環境ではないので、状況が隠蔽され、問題が顕在化しにくいというリスクもあります。特に個人事業主や小規模の会社同士のやり取りの場合には注意が必要です。この点に関しては、何らかの対策を講じていく必要があると思います。
リモートワークのメリットは、「いつでも」「どこでも」仕事ができることですが、前者はメリットに含めない方がいいでしょう。睡眠に限らず、様々な観点に照らし合わせても、通常の就業時間に合わせて、仕事はできるだけ日中に行うことをお勧めします。
「そうは言ってもそんなに簡単に仕事が片付かない」という場合は、「どの仕事をどの時間帯にやるか」に意識を向けましょう。
クリエイティブなこと、集中を要すること、テレビ会議など相手がいることなどは、日中に行う方が生理的に望ましい。そして夜に向けて、徐々に単純作業へと仕事内容をシフトダウンできればそれがベストです。
1日の仕事の割り振りをコントロールすることが、今の状況でも良い睡眠、ひいては健康的な生活を保つ上での重要なカギになるのです。
参考文献
(1)『日医雑誌第143巻・第12号/平成27(2015)年3月』
(2)『睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン』