アメリカと同様に、わが国でも、各地の知事さんたちは、緊急事態宣言の延期を求めているが、それは当然である。早期の解除で感染者が増えれば責任問題になるからである。しかし、感染防止とともに、崩壊しつつある経済にも配慮が必要である。
全国で非常事態宣言を1カ月延長するという決定になりそうであるが、そうすると丸2カ月間、外出や営業が自粛されることになる。ヨーロッパ諸国の例を見ても、ほぼ6週間というのが都市封鎖の平均的期間であるので、少し長すぎるのではないか。感染者や死者の数から見ると、日本はヨーロッパよりも圧倒的に少ない。
まだ届かない10万円、このままでは国民が日干しに
欧州での新型コロナウイルスの感染者・死者を見てみると、スペインが24万・2.4万人、イタリアが20.4万・2.7万人、フランスが17万・2.3万人、イギリスが16.6万・2.6万人、ドイツが16万・0.6万人となっている。まさに爆発的に感染が拡大したので、厳しい都市封鎖をして抑え込むしかなかったのである。何とかピークアウトし、やっと段階的に解除するところまで到達している。
そして、各国とも休業補償など、困窮する人々や業界に対して手厚い保護をしている。欧州は、アメリカと違って、積極的な財政支援など、「大きな政府」の伝統がある。とくにドイツのメルケル政権の迅速で充実した対応は、国民の高く評価するところとなり、支持率も8割を超えている。
これに対して、日本は1.4万・437人であり、状況は全く異なる。「放置すれば感染者85万人、死者42万人」という西浦教授の数理モデルは、日本の実情を反映しているものなのか。国に応じて様々な変数への考慮が必要な中で、万国に共通した数理モデルを構築することが可能なのかどうか。人との接触を8割絶てという指示も、日常生活を維持するために働き続けなくてはならない人々のことを考えると非現実的である。
8割という「脅し」が効いたのか、休日の繁華街への人出がその程度減っているところが多いというのは驚くべきことであるが、政策は科学に基づいて立案されるべきであり、「脅迫」に頼ることがあってはならない。
しかしながら、緊急事態宣言の延期も科学に基づかない形で決まる可能性がある。もし、1カ月延長するというのなら、第2回目の10万円の現金支給を同時に決めなければ、生きていけない人々が続出するであろう。第1回目の支給もまだ開始されておらず、これでは日本国民は直射日光の下で日干しにされる惨状である。
危機に対応できる政治指導者を持たない国の悲劇である。
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