来年夏に予定されている東京五輪の開催を危ぶむ声は、世界中から上がり始めている(写真:AP/アフロ)

 是が非でも開催させるつもりのようだ。

 来年夏に1年延期となった東京五輪・パラリンピックについて、大会組織委員会の幹部たちは当然のごとく「中止」や「再延期」させる可能性など頭の片隅にも描いていない。新型コロナウイルスの世界的流行に終わりが見えないことで、世界の主要メディアや医療の専門家からは1年3カ月後の大会実施をも危ぶむ声が出始めているのに、だ。

組織委員会・森会長はなおも開催を強調

 東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長はスポーツ紙のインタビューでウイルスとの闘いに勝利し、今までの何倍もの価値ある大会として開催を目指すと決めたことをあらためて強調。来夏もコロナの終息が見込めない場合には再延期ではなく、中止になるとも言い切った。しかし、それは大会組織委員会の総意としてあくまでも退路を断って開催一本の姿勢を強調する意味で公言したに過ぎない。武藤敏郎事務総長もメディアの取材に再延期や中止の可能性を完全否定し、まだ大会開催に向けて時間的猶予が十分にあるとの考えを示すと同時に従来通りの準備を進めていくと繰り返し主張している。

 だが、来夏の五輪開催のカギを握る邪悪なウイルスとの闘いの見通しは依然として暗い。日本国内における新型コロナウイルスの感染拡大に関しては「山場を越えた」との見方がある一方、ここにきて疑念も強まっている。「PCR検査の数が足りていないから感染者数が減っているのではないか」との指摘が方々から聞こえてくる点だ。

 これは地域ごとの格差もあるので一概に「間違いない」とは断言できないが、少なくとも症例としてかなり疑わしき人が検査されないケースは東京、大阪などの主要都市において1日単位でも1人や2人のレベルではないようだ。保健所に連絡したもののPCR検査を受けずに自宅待機で様子を見るように促され、容態急変によって息を引き取った人が死亡後の調べで実は陽性だったという悲しいニュースも、ここ最近だけで複数回見聞きした。