クオモ知事のように、入院率という指標にするとか、実効再生数、つまり、一人の患者が何人に感染させたかの数字を継続して見ていけばよいのだが、日本の専門家会議はこの発表を途中で止めている。

 この数字は、西浦教授の数理モデルに基づいているが、複数の研究者によるモデルを競合させるべきであり、4月29日の日本経済新聞は、西浦モデルにのみ依拠する危険性を指摘している。西浦教授自身もそのことを認めており、複数の提案を求める努力をしなかった安倍首相や加藤厚労大臣の責任は重い。もし、西浦理論が間違っていれば、それに依拠した対応策も間違うということだからである。

 緊急事態宣言を解除するかどうかについて、その判断基準となる科学的・疫学的データが欠如している。この状態で、どのようにして安倍首相は解除か延期かを決めるのだろうか。そもそも、専門家会議が正確に感染実態を掴んでいるのだろうか。

 日本のコロナ感染が今のような状態になったのには、専門家会議の判断や対応ミスが大きく響いている。専門家会議の意見のみに依拠して政府が対応策を決めるのは危険である。

 専門家会議のミスは、クラスター潰しにのみ専念し、市中感染の蔓延に手を拱いていたことにある。PCR検査に懐疑的で、意図的に検査数を減らしてきたのである。

欧州の都市封鎖はほぼ6週間、日本の緊急事態宣言「2カ月」は長すぎないか

 その一方で、院内感染対策には十分な配慮をせず、この点について国民に訴えかけることもなかった。PCR検査をすれば患者が病院に殺到して医療崩壊が起こるという主張のみであったが、現実に起こっているのは、院内感染によって医療が崩壊している事態である。東京上野の永寿総合病院や都立墨東病院はその典型例だ。

 マスクなどの防護具が圧倒的に不足しており、今でも入手困難で医療従事者からは悲鳴があがっている。日本政府の怠慢は厳しく批判されねばならない。台湾や韓国はマスクの問題は解決済みである。アベノマスクすら、まだ1割の世帯にも届いていない惨状だ。