ソウルの東大門デザインプラザ前のディスプレイでも、コロナウイルス感染予防としてマスク着用を呼びかけるていた(写真:AP/アフロ)

(李 正宣:ソウル在住ジャーナリスト)

 韓国社会の根深い「反日感情」が“マスク問題”で再び爆発した。韓国政府が国際社会にマスクを支援する案を検討すると、韓国人は日本に対するマスク支援に反対する国民請願を大統領府にアップするなど、強く反発している。

「日本へのマスク支援、反対します」

 積極的な検査と防疫でコロナ拡散が収拾段階に入った韓国では、新規感染者がひと桁で安定する日が続き、品薄状態だったマスクの需給状態も徐々に改善している。コロナ拡散以前は20社余りだった韓国のマスク生産会社は130社余りに増えたし、マスクの海外輸出が全面禁止されたことも、韓国内のマスク流通量を増やすことに貢献した。出生年によって決まった曜日に、1週間に2枚ずつマスクを購入できるようにした「マスク5部制」も定着し、今ではマスクを買うための長蛇の列は消え、マスクの在庫にも余裕分が生じている。

(参考記事)マスク品薄でパニックの韓国、「マスク配給制」導入
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59612

 このように韓国内のマスクの需給状態が改善の兆しを見せていることを受け、韓国政府は国際社会に対する防疫支援の一環として、マスクを寄付または輸出する案を検討しているという報道が流れた。韓国の日刊紙「韓国日報」は、「丁世均(チョン・セギュン)首相が最近、コロナ19(新型コロナウイルス感染症)関連会議で保健用マスクを輸出支援すれば、国格のグレードアップに役立つとし、米国や日本など韓国戦争(朝鮮戦争)参戦国にマスクを支援する案を検討するよう指示した」と伝えた。

 ところがこの報道が出た20日から韓国では「日本にマスクを送らないでほしい」という請願が続出した。大統領府の国民請願掲示板には『政府の韓国戦争参戦国へのマスク支援において、日本の支援に反対します』という請願が掲載され、2日後の22日現在で6万人あまりの同意を得ている。