高齢者にとって病院に行くことだけでも大変な重労働となる

 介護が必要な高齢者を「今、病院やデイサービスに行かせるのは怖い」と考えている家族は多い。

 事実、病院や福祉施設のクラスター発生が日本における感染者のかなりの割合を占めるようになり、さらには高齢者の重症化リスクも考えると「怖くて外に出られない(出せない)」と考えるのは当然である。

家族がテレワークでも介護は無理

 しかし、だからと言って、家族で世話や介護ができるかというとことはそう簡単ではない。

 家族も在宅勤務や休校になり、家にいるケースが増えてきた。

 とはいえ、病院への付き添い、日々の生活の世話、介護、それらをテレワークしながらこなすのは実際には困難だ。

 また、デイサービスに行かないという選択をしたとしても、介護に慣れない家族が体の不自由なお年寄りを入浴させることは至難の技である。

 さらに、何日も外に出なければ、身体機能の衰えは一気に加速してしまう。

 これらの状況を改善するために、新たなヘルパーや訪問介護を手配しようとしても、地域のケアマネージャーを通じて必要な手続きが完了するまでには、ひと月ほどかかってしまうのが介護保険制度の現状なのだ。

 状況は待ったなし。結局、感染リスクは高くてもそう簡単に「在宅に切り替える」という選択ができないまま、心配しつつも高齢者をデイサービスに送り出す家族も少なくない。