インドネシアのジャカルタで、政府が用意した墓地に新型コロナウイルスによる犠牲者を埋葬する防護服姿の自治体職員(写真:ロイター/アフロ)

(PanAsiaNews:大塚 智彦)

 コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う死者の数が増え続けているインドネシアで、感染拡大を阻止する効果的な対策として、最も感染者数が多い首都ジャカルタ州の都市封鎖の早急な実施を求める切実な声が高まっている。

強い要望があってもなかなか都市封鎖に踏み切れないジョコ大統領

 日本の首都東京でも「東京封鎖」を巡って政府と東京都さらに医療関係者の間で意見や思惑の違いが表面化して「非常事態宣言」や「都市封鎖」といった思い切った対策に踏み出せない状況が続いている。

 インドネシアの状況もそれに酷似している。医療関係者やジャカルタ州知事がさらに厳しい効果的対策として現在出されている基本的に「自粛などのお願いベースの緊急対応」をさらに一歩進め、強制力を伴ったさらに上の段階となる「都市封鎖」を公然と求める声が大きくなり始めている。

ガラガラ状態のジャカルタの地下鉄。ソーシャル・ディスタンス確保のため、席はひとつおきに座るようマークが付けられている(筆者撮影)

 ただ、「都市を封鎖する権限は中央政府にあり、地方公共団体が独自にするものではない」との立場を崩さないジョコ・ウィドド大統領は、「都市封鎖」を現状では選択肢として考えていないことをことあるたびに表明している。

 それでも、こうした政府の封鎖への逡巡を「手緩い対応」として、独断で地方の都市や町村が「事実上の封鎖」に踏み切るケースが増えている。

 町村の境となる主要道路に地方自治体関係者や住民ボランティアなどが独自にバリケードを築き、立ち入りを厳しく制限。住民に加えて日常必需品や食糧輸送関係者、治安当局者は身分証提示、簡易体温検査と消毒を受けて例外的に立ち入りを許す「独自封鎖」が始まり、その実施地方自治体の数は日に日に増えているのが今のインドネシアの現状だ。

(参考記事)インドネシア、中央政府の緩い感染対策に地方が反旗
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/59934