「どうすれば従業員が安心して休業できるか」という視点での意思決定を

 今回の新型コロナウイルスにともなう企業側の対応としては、法律上、従業員への休業手当の支払いが必要なケースと不要なケースが存在する。そのため、「法律上の支払い義務がない金銭は払わない」、または「法律に定められた“最低限”の対応のみを行う」という企業が多いかもしれない。

 もちろん、先行き不透明な経済情勢の中で、財務上の制約から、こういった対応を取ることを否定しているのではない。しかしながら、中長期的な事業継続を勘案した場合には、「どうすれば従業員が安心して休業でき、気持ちよく職場復帰できるか」という視点にも気を配りたいものである。その結果、「あえて法律上の義務を上回る対応を行う」という選択肢もあるだろう。

 例えば、休業手当は平均賃金の60%分を支払えば、法律上の義務を果たしたことにはなる。しかし可能であれば、従業員に配慮して「あえて平均賃金の80%分、100%分の休業手当を支払う」といった対応も検討したいところである。

「法律上、問題のない対応」が「企業経営上、最良な選択肢」とは限らない。法律上だけでなく、「倫理上、どうすべきか」という視点での意思決定が重要なことも、忘れたくないものである。

【参考】
東京商工リサーチ:第2回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査
厚生労働省:新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)

大須賀信敬
コンサルティングハウス プライオ 代表
組織人事コンサルタント・中小企業診断士・特定社会保険労務士