新型コロナによる日本国内の混乱はまだ続いている。五輪は予定どおりに開催できるのだろうか(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

(柳原 三佳・ノンフィクション作家)

 新型コロナウイルスの感染拡大をくいとめるため、専門家の方々が日々、懸命な取り組みをされています。

 3月10日の『読売新聞』は、以下のような見出しの記事を報じました。

『新型コロナ 血液から抗体検出 横浜市大 検査キット開発に光=神奈川』

 内容を簡単にまとめてみると、

<3月9日、横浜市立大の梁明秀教授(微生物学)らの研究グループは患者6人の血液を調べ、新型コロナウイルスだけに反応する特殊な抗体を検出した。抗体を調べることで、15~30分という短時間で感染の有無が確認できた。県衛生研究所と理化学研究所のグループも新型コロナウイルスの迅速な検査方法の開発を進めている>

 とのことです。

 また、2月27日には、すでに理化学研究所のサイトで、

<今般、神奈川県衛生研究所が新型コロナウイルスの3株をダイヤモンド・プリンセス号の乗船者の検体より分離することに成功し、それを用いて、神奈川県衛生研究所と理化学研究所が新型コロナウイルスの迅速検出法を開発しましたので、お知らせします>

 という広報がなされていました。

「抗体の検出」がいかなるもので、それがウイルスの検査にどのような影響を与えるのか・・・、素人の私にはまったくわかりません。しかし、一連の報道の中で目に付いたのは、「理化学研究所」という名称でした。

 というのも、この「理化学研究所」は、本連載の主人公である「開成をつくった男、佐野鼎(さのかなえ)」と、とてもゆかりの深い研究所だったからです。

1917(大正6年)に創設された理化学研究所

 理化学研究所(英語名=RIKEN)は、今から103年前、日本で唯一の「自然科学の総合研究所」として発足した財団法人です。

 同研究所によると、物理学、工学、化学、数理・情報科学、計算科学、生物学、医科学などに及ぶ広い分野で研究を進めており、2003(平成15)年には、文部科学省所轄の独立行政法人理化学研究所として再発足。2015(平成27)年には国立研究開発法人理化学研究所となり現在にいたっています。