スペインに非常事態宣言が発令された3月15日、バルセロナの観光名所サグラダ・ファミリアを訪れる観光客もやはりいなかった(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

 スペイン全土に非常事態宣言が発令され外出禁止となった3月16日の朝、バルセロナの街を歩いてみた。

 いろんな噂が飛びかっていた。外に出たら警官に止められて罰金をとられる。職務質問される。とにかくいいことはないから外出は避けたほうがいい——。

 通勤での外出や、食料品や医薬品を買いに出かけるのは許されるという。中心部の様子を見に行くことくらい許されるはず。警官に出くわした時のための言い訳を3つほど準備して、非常事態宣言下の街に踏み出した。

人影も、バルサの影も、消えた街角

 最寄りの大通り、グラシア通りに出る。ガウディの建築物、カサ・ミラやカサ・バトリョがある街の目抜き通りだ。

 いつもは人で溢れる並木道はやはりがらんとしていた。

 普段は活気ある通りだが、歩く人はほとんどいない。観光客はひとりもおらず、地元民らしき人も足早にどこかへ向かっている。この日は曇っていて小雨もちらついていたこともあり、どことなく世紀末感が漂う。東京でいえば無人の表参道を歩くようなものかもしれない。

 ディアゴナル通りで信号待ちをしている人もおらず、ほとんど人とすれ違わずにカサ・ミラに到着した。年中どんなときも観光客で列ができているカサ・ミラの前には誰もいなかった。あたりはしんとしている。静けさの中に立つ巨大な建築物がどこか寂しげに見えた。