デポルティーボ・ラ・コルーニャのスタジアムは街を囲む湾の先に立っている。
湾を挟み反対側から眺めると、試合前の照明が灯台のようにあたりを照らしている。蒼いマフラーを巻く人々がその光に引き寄せられるように海辺の道を進んでいく。随分と昔に感じられるようになった栄光の時代も、2部リーグ降格が決まった苦難の時も、彼らはずっとチームを支えてきた。
ほんの少し前まで、海辺を歩く人々の表情は不作の年の農夫みたいにどんよりと暗かった。
あろうことかデポルは今季2部リーグの最下位でもがき続け、上昇の兆しはまるで見えなかった。かつてレアル・マドリードやバルセロナの2強を抑えリーグ優勝したこともある名門の3部降格も間近——そう言われた。
しかし崖っぷちにいたチームは急に立ち上がり、破竹の勢いで順位を上げることになる。年末からの連勝は前節の引き分けで止まったが、降格圏を抜けだし今ではリーグ中位だ。気の早いファンは1部昇格プレーオフ出場圏内となる6位も目指せると息を巻く。
復活を遂げつつあるチームの中心で躍動するのが柴崎岳だ。
「この連勝も自分の中では不思議ではない」
「替えのきかない存在」(マルカ紙)
「生まれ変わったガク」(ラ・ボス・デ・ガリシア紙)
ベンチが多かったシーズン前半戦から置かれている立場は一変した。冷静に状況を見据えるいつもの表情の奥に、たしかな充実感がうかがえる。
「試合にも出ているし、いまは充実している。物足りない自分や足りない部分も感じてはいるけれど、いつものように試合を重ねるごとに改善と次の試合への準備を繰り返している。毎試合良くしていきたいし、良くなっている。結果も出ているし、この流れに乗って1試合1試合戦っていきたい」