(後藤 健生:サッカージャーナリスト)
欧州中央時間の2020年2月1日午前0時(英国時間1月31日午後11時)をもって英国がEU(欧州連合)から離脱した。
英国がアイルランド共和国、デンマークとともにEU(当時は欧州共同体=EC)に加盟したのは1973年1月のことだった。
EUは1952年に西欧6カ国(フランス、ドイツ、イタリア、ベネルックス3国)による「欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)」として始まり、その後、欧州経済共同体(EEC)、欧州共同体(EC)として発展してきた。長らく創設メンバーの6カ国だけで活動してきたが、英国などの加盟によって初めて新たな国が加わった。その後、加盟国は急激に拡大し、英国離脱後の現在、EU加盟国数は27にのぼっている。
加盟国の一体化を強化してきた共同体
元々、「石炭鉄鋼共同体(ECSC)」は、20世紀に起こった2度の大戦の原因の1つが英仏国境の炭鉱地帯を巡る争いだったことを踏まえて、石炭や鉄鋼生産を共同管理しようとしたものだった。しかしその後、1958年に経済統合を目指す「欧州経済共同体(EEC)」と、新たなエネルギー源として登場した原子力を共同管理するための「欧州原子力共同体(Euratom)」が発足。その後、これらの組織が統合されて「EC」、そして「EU」へと発展していった。そして、その過程で共通通貨のユーロが発行され、財政金融政策から環境政策など多くの分野で協力関係が築かれてきた。
つまり、共同体は一貫して加盟国間の協力関係を太くし、機能面を拡大してきたのである。「統合の動きが進めば自然に機能面の拡大が進んでいくであろう」という「スピルオーバー理論」なども唱えられていた。
実際、共同体が進めてきた政治、経済・財政政策、法律などの公的な分野の統合とは別に、欧州諸国では民間分野でも協力関係の強化が進んだ。