「単に営利を主眼とする事業は必ず永続性なく滅亡するものであるが、社会、国家を益する事業は永遠に繁栄すべきことを確信する」
この言葉は、ブリヂストンの創業者である石橋正二郎が生前に語っていたもの。2020年2月19〜20日に開催された「サステナブル・ブランド国際会議2020横浜」にて、同社の現CEO・津谷正明氏が紹介した一節だ。1931年、石橋によって創立された同社は、後発の存在でありながら世界最大のタイヤ会社となった。その発展を支えてきたのが、創業者が見据え続けた「社会への貢献」だという。実際、今も企業の利益を超え、社会の公益を考えた事業を多数行っている。津谷氏の基調講演の内容から、その実像に迫っていく。
買収から始まった20年の苦境が、大きな契機に
ブリヂストンは、サステナビリティを見据えた活動を拡大させているという。その考えは創業時から強かったが、ある出来事をきっかけに改めて注力する形になった。
津谷正明CEO(以下、敬称略) 私たちのグループは、1988年にアメリカのファイアストン社を買収しました。世界規模の企業を完全子会社化しましたが、そこからの20年は苦しみの連続でした。
このとき行ったのが、ブリヂストンの基本、根本が何かを見つめ直すことです。そこで、企業理念のリファイン(洗練)を始めたのです。
時代は変わり続けます。社会は人によって構成されていますから、時代が変われば生活が変わり、価値観も変わります。当然、私たち企業の立ち位置も変わります。だからこそ、企業理念をリファインして時代に合わせていかなければなりません。
2011年に行った企業理念の更新も、それが最後ではありません。今後、おそらくまたその時代にあったものに変えていくでしょう。あくまで今の時代のものとして、2011年にリファインしました。
ただ、リファインすると言っても、中核にあるものは変わりません。創業者・石橋が社是として唱えた「最高の品質で社会に貢献」です。これを「使命」とし、そのために意識したい姿勢を4つの心構え、「誠実協調」「進取独創」「現物現場」「熟慮断行」として示したのです。
「バス停留所」のプロジェクトにタイヤメーカーが挑む
石橋正二郎が創業から大切にした「社会への貢献」。どん欲にその目標を追い続ける姿勢は、直近の企業活動にも表れている。津谷氏は、講演の中でその活動の一部を紹介していった。
津谷 私たちが誇りに思っている活動のひとつが、「Bridgestone World Solar Challenge」です。太陽光を動力源として、オーストラリアを北から南へ約3000km縦断するもの。2年に1度行われる、世界最高峰のソーラーカーレースです。
日本からも多数のチームが参加し、世界中の企業や研究機関もチームをサポート。この大会から新しいエンジニアや技術が生まれています。私たちはスポンサーという形で、未来の技術、環境負荷を低減する技術を支援していきたいと思っています。