福島第一原子力発電所で冷温停止状態を実現するために奮闘されている自衛隊、警察、消防、メーカーの方々、協力企業の方々、東京電力の方々には本当に頭が下がる。

 週刊誌等の情報では、作業員の寝場所はホールのような場所で、作業服のまま、寝袋で雑魚寝をしているらしい。食料は豊富だというものの、インスタント食品ばかりで、料理された食べ物は食べられないという。

 このような話を聞くと、誰の責任かは知らないが、金の使いどころを間違っているとしか思えない。まさに日本の存亡をかけて闘ってくれている方々に、なぜ、もっとまともな食事と寝る環境を整えてあげられないのか。

作業を始めてみると図面に載っていないことばかり

 もっとも、現場で作業している会社の社長は、「こんな時だけそんな環境つくったら、かえってみんな怖がって逃げ出してしまいますよ」と言う。確かにそうかもしれないな、とも思う。

 その社長が言うには、「東京電力の人たちは、何人いても仕方がないんです。別に彼らが無能だとか無責任だからということではなく、そもそもスパナを持ってポンプのネジを回したことなんてない人たちですからね。どこにどういう形でポンプが座ってるのか、どうやってポンプを付け替えるかなんて、知ってるはずがありません。

 作業を始めてみると、図面に載っていないことが山ほど出てくるんですよ。図面をどれほど念入りに見たって、現場に行ってみなければ、いや、実際に作業を始めてみなければ細かいことは分かりません。

 寸法通りのスパナを持って行ったら、周りの鉄骨にぶつかってうまく回せないとか。ボルトが奥に付いているので、首が長い特殊なソケットレンチを持って行かなければ回せないとか。または、ボルトが錆びていて、どんなにトルクをかけても回らないとか、ねじ山が崩れて回せないとか、そんなことばかりですよ。

 通常の修理の場合は、時間に余裕がありますから、わざわざ特殊レンチを作らせたりします。でも、放射線を浴びながらの作業ですから、そんなことをしている余裕はない。すべての作業を手早くやらなければいけません。結局、どうやっても、昔スパナを持って作業した人間、つまり私たちが行くしかないんですよ」

 「ここは日本だから、作業者が決死の覚悟で残って作業して、何とか事態の悪化を食い止めています。でも、もしも発展途上国で同じことが起きたら、そこで作業をしている人たちが残るだろうかと考えると、ちょっと心配ですね」