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(佐藤 けんいち:著述家・経営コンサルタント、ケン・マネジメント代表)

 本日は「建国記念の日」である。国民の祝日である。

 祝日はかつて「旗日」(はたび)といったものだが、近年は祝日でも日本国旗が掲揚されている家はあまり見なくなったような気がする。官公庁は別にして、国旗掲揚という「伝統」も廃れつつあるのかもしれない。

 いまここで「伝統」とカッコ書きで書いたのにはわけがある。「伝統」といっても、江戸時代以前にはおこなわれていなかったからだ。日の丸が実質的に国旗として使用されるようになったのは幕末の「開国」後のことであり、正式に国旗となったのは1999年のことに過ぎない。「国旗及び国歌に関する法律」の制定に基づくものだ。

「建国記念の日」が制定されたのは、いまから54年前の1966年のことである。「祝日法」改正によって祝日に加えられ、翌年1967年から施行された。

 もともとは戦前の「紀元節」だったが、1945年の敗戦以来、占領軍のGHQによって廃止させられていたものを復活させたものだ。祝日法改正の関係者にとっては、敗戦から20年たっての悲願達成ということだったのだろう。

 ここで注目したいのは「建国記念の日」という名称だ。「建国記念日」ではなく「建国記念の日」である。「の」の字が挿入されているのだ。「の」の字が入るかどうかで、ニュアンスが異なってくる。ある種の配慮というか、確信をもてないがゆえの、ためらいの匂いが漂っているのだ。制定当初から疑問視がつきまとってきた「建国記念日」だが、2月11日がそうである理由は全国民が納得するようなものではない。正直いって、あまりピンとこない祝日なのだ。

 日本以外の諸外国では、独立記念日や革命記念日、あるいは統一記念日など、明らかに確定できる日時が「建国記念日」と定められている。有名なものでは、米国の「独立記念日」(インデペンデンスデー)は英国から独立を勝ち取った1776年7月4日、フランスの「革命記念日」はバスティーユ監獄襲撃によってフランス革命が始まった1789年7月14日を記念日としたものだ。このほか、1947年のインドの独立記念日(8月15日)、1917年フィンランドの独立記念日(12月6日)も、それぞれ英国とロシアから独立した日を記念日としたものだ(参考:本コラム「独立から70年!いよいよ始まるインドの時代」「サンタとムーミンの国に学ぶ『小国』の生き残り術」)。

 ところが日本には独立記念日も革命記念日もない。いつ「建国」されたのかわからないほど古い国であることは確かだが、建国された日時まで確定することは不可能だ。だから、「建国記念日」とは言い切らずに、「の」の字が入った「建国記念の日」となるわけなのだ。