(大西 康之:ジャーナリスト)
今年は「オリンピック・イヤー」。家電メーカーにとっては「4年に一度の稼ぎ時」である。米EV大手テスラが昨年末、米国に続き中国でもEVの生産を開始した。これを受け、テスラの株式時価総額は独フォルクスワーゲン(VW)を抜き、自動車メーカーとしてトヨタ自動車に次ぐ世界2位に浮上した。今年は「電気自動車(EV)元年」。テスラに車載電池を一手に供給する電池メーカーには「バラ色の未来が待っている」はずである。
それなのに、日本最大の家電メーカーで、世界最強の電池メーカーであるパナソニックが2月3日に発表した第3四半期決算を見た時には、こんな言葉しか浮かばなかった。
「三十六計逃げるにしかず」
パナソニックが3日に発表した2019年4月〜12月期の連結決算(国際会計基準)は営業利益が前年同期比18%減の2406億円。20年3月期通期の業績見通しは従来予想通り、売上高が前期比4%減の7兆7000億円、営業利益は27%減の3000億円とした。新型肺炎の影響が織り込まれていないことを考えると、赤字転落も十分にありうる。
だがそれよりも衝撃的だったのは、決算と同時に発表されたもう一つのニュースの方だ。
車載用角形電池事業はトヨタとの合弁会社に
この日、パナソニックは車載用角形電池事業をトヨタ自動車との合弁会社に譲渡すると発表した。合弁会社の出資比率はトヨタ51%、パナソニック49%であるため、同事業はパナソニックの連結対象から外れる。
パナソニックが手がける車載電池は円筒型と角形の2タイプがある。円筒型はテスラ向け、角形はトヨタなどテスラ以外のEVメーカー向けである。今回の合弁を証券市場関係者は「テスラ向け以外の車載電池事業をトヨタに売り渡した」と捉えている。
車載電池事業はテスラ向けに集中する、というなら話は分かる。だが、どうやらそうではないらしい。