カルロス・ゴーン氏の国外脱出劇で「楽器ケース」の中に潜んでの大脱走が話題となりました。それを真似して楽器のケースに入ってみるという遊びがあちこちで発生しているようです。
これに対して、楽器メーカーのヤマハ関係者が、「あえて理由は記さないけれど悲劇が起きてからでは遅いので」として牽制するSNSを発信し、大きな反響が出ているようです。
さて、ここで改めて考えてみましょう。楽器のケースとはいかなるものか?
私たち音楽家にとって、楽器は自分自身を表現するための唯一最大のチャネルで、命と同様に大切なものです。
プロを目指す場合、ヴァイオリン一つ、その弓1本が、普通に家1軒くらいの値段になる場合があります。
チェリストが飛行機で移動する際は、隣の座席をチェロ君のためにリザーブし、2人連れで旅行することになります。当然、料金も2倍かかる。
社会全般が日頃あまり考えることがないだろう「楽器」の、さらに周辺にある「ケース」の本質的な役割から、考えてみたいと思います。
楽器の大敵、湿気と乾燥
早い時期のゴーン報道で、すでに楽器ケースには空気穴が準備されており、それがなければ窒息、といったことが記されていました。
コントラバスとかチェロ、あるいはヴァイオリン、ヴィオラなどに限らず、ハープでも、いや、そもそもピアノという楽器が「木造」であることに注意しましょう。
木製の器具を長く使ううえで、一番重要な要素として「湿度管理」を挙げることができます。
湿気が少なすぎても、乾燥して木の板は割れてしまいます。また湿気が多すぎると、楽器本来の鳴りが失われてしまう場合があります。