米軍による空爆で死亡したイランのソレイマニ将軍を追悼し喪に服すイラン国民。写真は1月3日、テヘランで米国への抗議デモを行った人が手に持っていたソレイマニ将軍の写真(写真:新華社/アフロ)

 1月3日、イラン・イスラム革命防衛軍「コドス」の司令官として国際的に知られる、ガセム・ソレイマニ将軍(1957-2020)がバクダード国際空港で暗殺されたとの報道がありました。本稿は発表直後にベルリンで記しています。

 空港内を車輛で移動中、米国の放った無人飛行機、つまりAI駆動の軍事用ドローンが、具体的にはReaper「死神、首狩り人」と呼ばれるリモコン兵器ですが、車列に対してロケット弾を3発発射。

 これによりイラン・イスラム、シーア派武装組織「カタイブ・ヒズボラ」の最高指導者、アブ・マフディ・アル・ムハンディス氏ら4人の指導者を含む、合計8人が殺害されたと報じられました。

 とりわけソレイマニ将軍は国際的な知名度を持ち、日本でいうなら「乃木大将」「東郷元帥」「山本五十六」といったイメージに近い、アイドル的なイランの国家英雄です。

 彼を狙い撃ちした今回の暗殺は、実質的に米国のイランへの「宣戦布告」ないし「作戦行動誘引」のための挑発行動と考えることができるでしょう。

 ソレイマニ将軍は2018年7月、トランプ大統領を名指しで「もしアメリカがイランを攻撃したら、我々は米国の所有するすべてを破壊するだろう」(https://www.bbc.com/japanese/44977157)と警告した、恐るべき胆力と勇気をもった人物です。

 これに先立って米国のドナルド・トランプ大統領は、イランのロウハニ大統領に宛てるとして「決して、二度と、再びアメリカを脅したりするな(NEVER, EVER THREATEN THE UNITED STATES AGAIN)と大文字で書くツイッター(https://twitter.com/realdonaldtrump/status/1021234525626609666)を公開、それに対する公然たる反論がソレイマニ氏の表明でありました。

 事実トランプ氏は上記に続けて「さもなくば、イランは人類がかつて経験したことのないほどの苦しみを受けるだろう(OR YOU WILL SUFFER CONSEQUENCES THE LIKES OF WHICH FEW THROUGHOUT HISTORY HAVE EVER SUFFERED BEFORE.)」と恫喝しました。

 さらに、「アメリカはイランの痴呆的な暴力と死の発言を黙ってみている国ではない。首を洗っておけ(WE ARE NO LONGER A COUNTRY THAT WILL STAND FOR YOUR DEMENTED WORDS OF VIOLENCE & DEATH. BE CAUTIOUS!)」と大衆揺動的なセリフを並べています。

 ソレイマニ将軍の軍人らしい簡潔な表現と極めて対照的と言わねばなりません。