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 日本は2030年に人口の3分の1が65歳以上になることが予測されています。また、厚労省の資料によれば、健康寿命も2010年から2016年までに2歳以上も伸びました。健康寿命は男性では72歳、女性は74歳です。一方で、生産年齢人口は減り続けています。そのような時代の中で、人事としては何を考え、どんな人事戦略を考えるべきなのでしょうか。今回は人生100年時代の人事戦略についての視点をご紹介します。

「人生100年時代の人事戦略」とは? 

 人生100年時代と言われて数年が立ちます。リンダ・グラットンとアンドリュー・ スコットの著書「LIFE SHIFT―100年時代の人生戦略」は日本でも大ベストセラーになりました。本当にほとんどの人が100歳まで生きる時代になるのか議論はありますが、統計的に平均寿命も健康寿命も伸びていることは事実です。一方で15歳~64歳の生産年齢人口は、2000年から2025年までに1500万人も減る見込みです。さらに、日本ではすでに働きたい人はどこかの企業で働いている完全雇用状態が続いています。これからの日本企業にとって、人はまさに希少な資源です。

 空前の人手不足時代。こんな時代に人事としては何を考えるべきなのでしょうか。まず、人材不足倒産があり得ることを認識し、事業の存続と発展を真剣に考える必要があります。ある程度ネームバリューのある大手企業であれば、それなりに人は集まるでしょう。しかしネームバリューのない中堅企業は、ますます人材確保が厳しくなるでしょう。では、それらの企業はどうすればよいのでしょうか。

 ひとつは女性活躍の推進を図ることです。いまだに男性主義が強い企業は多く存在していますが、女性の活躍はマストでしょう。

 ですが、そもそも女性が少ない企業もあります。そうなると、定年を延長して優秀なシニア層に活躍していただくのが次の選択肢になります。その反面、専門性や生産性が低いシニア層には、次のキャリアを選んでいただく必要があります。本音を言うとなるべく働きつづけていただきたいのですが、最も人数が多く給料も高いシニア層全員を雇用し続けるのは、環境変化の激しい現代の企業にとって至難の業です。

 また、グローバル企業であれば、外国人を積極的に採用する方法もあり得ます。既に大手企業では、優秀な外国人の採用が進んでいます。

 他には、副業人材を活用する方法も考えられます。優秀な人材であれば、週に数時間だけでも副業で来てもらえれば、充分事業に貢献していただけると思います。

 さらには、そもそも人を活用しないこともあり得ます。定型業務はアウトソーシングするかRPAなどのロボットを活用し、本当に自社のコアな業務だけに人材を投入する方法も、人材不足を補う有効な手段でしょう。

 このように、単に人材を採用するだけでなく、あらゆる手段を検討して人材不足による事業停滞を阻止するのが、これからの人事の役目ではないでしょうか。