自社の社風について、社内の目線は合っていますか?

 そもそも、社風とはいったい何なのでしょうか。
 私は今まで多くの会社の人事担当者にお会いするたびに、ある質問を投げかけてきました。それは「御社の『できる人』とはどんな人ですか?」という質問です。その答えは、各社とも異なっていました。

 あるベンチャー企業では「ファシリテーションがうまい人」、金融大手では「基本的なビジネスマナーがきちんとしている人」、あるメーカーでは「協調性がある人」でした。

 また、ある調味料メーカーの方にインタビューした際には、「私たちはマヨネーズで心がつながっているんです」という答えが返ってきました。

 一番面白かったのは、某大手ゲーム会社の「とにかくゲームが好きな人」です。このゲーム会社では、社員が常にゲームをしているそうです。引き出しには常に携帯型ゲーム機が入っており、どこへ行くにも何をするにもゲームの話題ばかりです。ゲームが好きな人にとっては天国ですが、そうでもない人にとっては苦痛でしょう。

 このように、自社製品に特色がある企業や専門性の高い業界には、社風をわかりやすく説明できる「共通言語」がある傾向にあります。自社の社員がつながりを感じているもの、好きなものがわかりやすいほど、社内の共通言語や共通認識がはっきりしているのでしょう。

 さらに、その共通言語化した社風を外部にはっきり示すことで、「あの会社はこんな会社なんだ」ということを世の中の人々が理解することができます。

 社風に合う人を採用するには、まず自社のカルチャーを言語化し、社員同士の共通認識として定着させることが必要です。そのうえで積極的に外部に発信していけば、自然と社風に合う人材が集まってくるでしょう。ここまで取り組んで「社風に合わない」という理由で離職する人がいれば、本当に合わない人だったと割り切ることもできます。

 逆に言えば、社風をもとに採用基準をつくったとしても、社風がどのようなものか共通言語化されていない組織では機能しない可能性があります。

 つまり、社風に合わない人を採用してしまう真の原因は、社内で「わが社の社風」が共通言語化されていないことだと言えます。理念、社風、求める人材像、採用基準のすべてが合致し、社内に浸透していることで、初めて採用基準は機能するのです。

 あなたの会社は、社風を表す共通言語があるでしょうか。

著者プロフィール
 

中野 在人

東証一部上場大手メーカーの現役人事担当者。
 

新卒で国内最大手CATV事業統括会社(株)ジュピターテレコムに入社後、現場経験を経て人事部にて企業理念の策定と推進に携わる。その後、大手上場中堅メーカーの企業理念推進室にて企業理念推進を経験し、人材開発のプロフェッショナルファームである(株)セルムに入社。日本を代表する大手企業のインナーブランディング支援や人材開発支援を行った。現在は某メーカーの人事担当者として日々人事の仕事に汗をかいている。
 

立命館大学国際関係学部卒業、中央大学ビジネススクール(MBA)修了。
 

個人でHRメディア「HR GATE」を運営中。
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