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  採用で一番難しいのは、「社風に合う人」を採用することでしょう。前職で活躍していたハイパフォーマーでも、社風に合わなければすぐに辞めてしまいます。筆者も「社風に合わない」という状態を、人事としても転職者としても、身をもって経験してきました。
 転職市場が活性化する今、多くの日本企業が「社風に合う」ことを含めた採用基準を明確化しようとしています。そこで今回は、「社風に合う人材」を採用するためのヒントをご紹介します。

「社風に合う・合わない」は本人の性格と関係するのか

 私は今まで3回の転職経験があります。転職者として多くの面接を経験する中で、「この会社の社風に自分は合わない」と感じたことが多々あります。また、人事としても「この人、うちには合わないな」と思う瞬間があります。そのような意味で、私は人事と転職者の両方の目線を持ち合わせています。今回ご紹介する内容は、一般的な人事目線とは少し違うかもしれませんが、「社風に合う」人を採用するにはどうすればいいのか、一つの考え方として読んでいただければ幸いです。

 元も子もない話ですが、応募者が社風に合うか合わないかは、面接時点ではなかなかわかりません。例えば、面接でパフォーマンスが高い人が、入社後に残念ながら活躍出来なかった例は少なからずあります。

 特に、新卒採用の場合はなおさらです。社会人経験のない新入社員は面接に真面目に取り組みます。そして、入社後は素直に仕事をこなしていきます。まだ社会人として何色にも染まっていないからこそ、自社の色が付きやすいと言えるでしょう。しかし本人の成長とともに、本来の性格が顔を出してきます。その結果、「やっぱりこの会社ではない」と気づいて離職に至るのでしょう。

 では、明確な採用基準を設ければ自社の社風に合う人が採用できるかというと、そうでもありません。例えば、ある大手企業は、経営理念をもとに採用基準を設定していました。その企業では、理念の中に「志」という言葉があります。そこで面接の質問に「志を持っているか」という項目を入れました。しかしその結果、選考に合格したのは全くタイプの異なる方々でした。事前に関係者の間で自社にとっての「志」とは何か、すり合わせができていなかったからです。このように、意外と社員や役員同士でも会社に対する考え方は異なってくるものです。

 最近、仕事で採用時の性格検査のデータを調べました。すると驚くことに、入社した方の性格に一定の強い傾向は見られず、バラバラであることがわかりました。また離職者も調べましたが、やはり性格に強い一定の傾向は見られませんでした。この結果だけでは一概に言えませんが、「社風に合う・合わない」を決定している要因は、本人の性格ではなさそうです。