「より多くのカネをつぎ込んだ方が勝つ」
米大統領選でよく語られてきた話である。2016年の選挙でドナルド・トランプ氏(以下トランプ)が当選するまでは、この話が30年以上も大統領選で生きてきた。
候補が集金した資金を比較するだけで、選挙前に当選者が予想できもした。
クリントン、ブッシュ、オバマの各大統領は2度ずつ大統領選で勝ち、いずれもライバル候補より多額の選挙資金を集めた。
カネで直接、票が買えるわけではないが、テレビやラジオ、インターネットを使った政治広告は制限がないため(ツイッターの政治広告は2019年11月22日で禁止)、カネをつぎ込むほど多くの票を期待できた。
選挙には莫大な資金が必要になる。大統領選はなおさらだ。
50州で選挙事務所を開設し、運動員を雇用し、プラカードを印刷し、テレビCMを流すといくら資金があっても足りないくらいである。
だが2016年選挙でそれまでのカネの神話が消えた。
トランプが集金した選挙資金はヒラリー・クリントン氏(以下ヒラリー)が集めた額のほぼ半分だったが、それでも勝ったのだ。