従来少なくなかった「名義貸し」「名ばかり産業医」
── このようなサービスを開発された背景やきっかけは何だったのでしょうか。
鈴木 職務が原因のメンタル疾患や過労自殺は社会問題となり、働き方改革も推進されていますが、大きく改善が進んでいるとは言えません。従業員が健康に働ける職場づくりにおいて、産業医は、本来きわめて重要な役割を果たすべき存在です。産業医を選任していても「名義貸し」状態の企業もあり、産業医の業務である職場巡視ができていない、メンタルヘルス対応やストレスチェックの面接指導を行っていないなど、実働がないケースが少なくなかったのが現状です。
私どもは産業医の紹介事業を行ってきた中で、そうした事業場にも多く出会い、何が課題なのかを調査しました。その結果、分かったことは、企業の方々がそれぞれの事業場に合った産業医を、どのように選任すればよいのかが分からないケースが多いことです。このため、経験やノウハウがない医師に依頼し、思うように動いてもらえない結果になりがちでした。企業の人事担当者の方々が多忙なため、産業医活動に関してなかなか時間を取れないことも問題でした。一方、産業医の方はというと、実は有資格者数は十分にいます。しかし、「名ばかり産業医」が多いと言われてきた中、経験を積んでいる産業医が少ないのが実態でした。
そこで、こうした課題を解決するサービスとして、企業のニーズに合った産業医を紹介するだけでなく、人事担当者の方々にできるだけ短い時間で効率的に産業医活動を進めていただける仕組み、また、経験が豊富ではない産業医の先生方が現場に出ても円滑に業務を行えるような仕組みを考え、形にしていきました。
それぞれの企業・事業場に合った産業医をマッチング
── サービスの提供開始後、企業の反響はいかがでしたか?
鈴木 「こういうサービスが欲しかった」という声をたくさんいただき、やはり、産業医活動について課題を抱え、何とかしたいとお考えの企業は多いのだということを強く実感しました。2018年11月現在、78社の企業・全国236の事業場で『産業医サポートサービス』をご利用いただいています。特に、2018年に開始した『休職・復職サポートサービス』は、どのステップで何をすればよいかを全員で共有できるマニュアルと書式セットをご提供するという、これまでになく実務に即したサービスであり、『M Connect』についても、産業医の業務管理システム自体が従来なかったものだと認識しています。そのため反響が非常に大きく、ご契約数がこの1年ほどで急増している状況です。
── 産業医サポートサービスを導入した企業の事例を教えてください。
鈴木 ITデジタルマーケティングの支援を行っているスタートアップ企業、A社様では、産業医の選任義務が発生する従業員50名を超える前から当社の『産業医サポートサービス』を導入し、産業保健体制を構築されています。A社様の場合、今後の新規上場を見据えて、実施義務のある業務は早くからプロに任せるのが確実だと考え、50名未満で選任義務のない事業場向けに手軽な料金設定としている「コンパクトプラン」を契約いただきました。従業員数が50名を超えた現在では「スタンダードプラン」に変更しており、スモールスタートした事例となっています。
産業医については、「女性の従業員が健康問題をなるべく相談しやすいように」との要望があり、産婦人科の女性の先生を紹介したところ、「親身になって社員の体調に関する相談に乗っていただいている」とご満足いただいています。産業医活動の一つである衛生委員会を初めて実施した際にも、「マニュアルや書類が一式準備されているため、それに則ってスムーズにできた」と評価の声をいただいています。