「管理職のコミュニケーション力」が阻害要因のトップに

HRプロ【図表7】コミュニケーションを阻害している原因

 コミュニケーションを阻害している要因について、今回の調査では、「コミュニケーションスキルの低下」が組織内のどの層に顕著であるかも含め、選択肢を細分化した。その結果、昨年1位を占めた「組織風土・社風」(45%)を抜いて、「管理職のコミュニケーション力」が53%で阻害要因のトップになった。3位は「社員のコミュニケーション力」(44%)、4位が「経営層のコミュニケーション力」(33%)である。社員のコミュニケーション力低下が危惧される中、彼らをリードする管理職にも、高いマネジメント能力が求められている。

 では、具体的にどこに原因を感じているのだろう。

・上司の業務過多によるコミュニケーション時間の不足。(サービス)
・管理職が部下の業務以外のことに興味をもたない。(サービス)
・若く管理職になるものも多く、管理職教育も不十分の為、マネジメントができていない。(メーカー)
・「出る杭は打たれる」社風から思ったことを提案しにくい。(メーカー)
・メール等記録の残る方法に依存している傾向が強く、対面でのコミュニケーションが少ない。なるべく対面しないで済まそうとする傾向がある。(サービス)
・業務効率化への傾注と残業規制の強化で、ワイガヤが減少した。その結果、部門横断的な結び付きが希薄化している。(商社・流通)
・上司と部下の人間関係を構築する場所が無くなっている(業務時間内のみ)。食事会や飲み会が必ずしも良いわけではないと思うが、コミュニケーションスキルのない上司の場合は厳しいと感じる。(メーカー)
・管理職を含め、個人として仕事で成果をあげれば良いと考える社員が多く、チームワークを推進しない。(情報・通信)
・プライベート時間を優先する傾向が増加している。(情報・通信)
・人材の流動化が進んでおり、中間入社者が職務ライン以外に社内で関係性をうまく作れず、情報的に孤立しがち。(マスコミ・コンサル)
・契約社員、派遣社員、請負常駐、業務委託など、雇用形態が多様化し仕事に対するスタンスがそれぞれ違ってきているので目標共有が難しい。(マスコミ・コンサル)
・派遣社員など短期の雇用が増えて、顔を知らない社員が増えた。(商社・流通)

 業務効率化や残業規制、成果主義、プライベート優先などが、結果として「業務の多忙化」と「没コミュニケーション」につながり、「対面」で人と関わる余裕までなくなっている、という感想が見受けられた。中には「一人でパソコンに向かっているから」という声も。また、必ずしも「阻害原因」とは言えないが、ダイバーシティに対する課題も散見される。


 管理職に対する人事からのサポートも、今後ますます必要となっていきそうだ。

 

「社内報」を実施している企業は30%

HRプロ

【図表8】コミュニケーション不全の防止・抑制のために実施していること(全体)

 コミュニケーション不全の防止・抑制として、実際に実施している施策についてアンケートを取ったところ、「社内報」(30%)が1位となった。以降、「従業員アンケート」(28%)「自己申告制度」(26%)と続く。

 

大企業では研修・制度の実施が多い

HRプロ【図表9】コミュニケーション不全の防止・抑制のために実施していること(大企業)

 大企業だけで見ると、「クラブ・サークル活動」(21%)「飲み会・ランチ補助」(20%)「レクリエーション」(17%)「社員旅行」(12%)などは、全体より低い割合となった。

 一方で、「社内報」(47%)「従業員アンケート」(41%)「自己申告制度」(32%)「メンター制度」(31%)「コミュニケーション研修」(28%)「コーチング研修」(26%)「社内公募制度・社内FA制度」(21%)は、全体よりもかなり高い。大企業では依然として、研修や制度を実施する割合が極めて高いと言える。