大企業では「経営層と社員」の間に課題感がある 

HRプロ【図表3】課題のあるコミュニケーションはどこか(大企業)

 数多くの部門や事業所を持つ大企業でも、やはり部門間に課題を感じている。特徴的なのは、「経営層と社員」の間の課題感が、全体の数値より8ポイントほど大きいことだ。やはり社員数が多くなるほど、経営層と社員の距離は離れてしまうのだろうか。

 多様な働き方をする社員とのコミュニケーション不全も

 コミュニケーション不全を感じる具体例を見てみよう。

【大企業】
・メール文化により、オーラルベースでのコミュニケーションが減った。(商社・流通)
・会話が少ない。飲みに行かない(誘われない)。個人志向が強い(特に若者)。会話がないから仕事のベクトルに齟齬が生じる。(情報・通信)
・経営層と社員の間では、事象のみ伝わり、本来の目的や意味や思いが伝わらない。(商社・流通)
・上長が忙しく席にいないことも多いため、メンバーとのコミュニケーションが十分でない。(メーカー)
・変化のスピードにコミュニケーションがついてきていない。(メーカー)
・担当する業務での関わりが無いと、あまりコミュニケーションをとる場が少ない。(メーカー)
・セキュリティを意識しすぎるあまり、必要情報にアクセスできない。(メーカー)

【中堅企業】
・会話の少ない環境。(サービス)
・経営者との間では、従業員へ説明なしに進めることが多く、噂や実施中に知ることが多い。(メーカー)
・組織が縦割りで、連携が取れていないと思うことが良くある。(メーカー)
・事業所間となると、管理職以上でないと話す機会がほとんどない。(情報・通信)
・自らの仕事に専念するあまり、他者の仕事・役割に対し、無関心であることが多い。(メーカー)
・出向者とプロパー社員の間に溝がある。(運輸・不動産・エネルギー)
・客先常駐者が多い。帰社日を利用し部門内のコミュニケーションはとれているが、部門間となると、きっかけを持つ社員同士以外は、コミュニケーションがない。(情報・通信)

【中小企業】
・メール、メッセンジャー、チャットなどを利用することが増え、顔を合わせて会話をする機会が減った。(メーカー)
・会社の方針等が不透明な状態のまま。知る人のみぞ知る、という状態になっている。(メーカー)
・上司が多忙すぎて部下の行動が見えていない。(商社・流通)
・情報伝達のスピード感がない。(メーカー)
・担当する仕事を越えてのやり取りが少なく、仕事における効率や人材の融通が損なわれている。(メーカー)
・営業の事業所と倉庫のロケーションが離れているためコミュニケーション不全が発生している。(メーカー)
・専門性の高い業務内容であるため、チームで仕事をせず、各々で業務を進めている。(情報・通信)
・フロアが別だったり、直行直帰でオフィスで働かない人も多かったりするので、コミュニケーションが電話だけになってしまうことも多い。(サービス)
・契約社員が他部門の情報を得る手段が口コミ以外にないため、社内にある技術やリソースの有効活用ができていない。(情報・通信)

 企業規模に関わらず、各社が抱く課題感は似通っている。特筆すべきは、「出向社員」「テレワーク社員」、「契約社員」とのコミュニケーションに課題感が生じていることだ。「働き方改革」により、今後ますます多様な働き方が増えてくる。企業人事にとって、避けては通れない課題となりそうだ。