2019年10月1日、韓国「国軍の日」式典に出席した文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(北村 淳:軍事社会学者)

 韓国海軍が内部にタスクフォースを設置し、原子力潜水艦建造を実現させる努力をしている──。韓国海軍当局が公に認めたことが、10月10日、明らかになった。

 海軍に対して実施された国政監査に対して、沈勝燮(シム・スンソプ)大韓民国海軍参謀総長は、韓国国防にとって原子力潜水艦保有は有用かつ必要であり、海軍は攻撃原潜を手に入れるべく準備を進めている旨を認めた。

 ただし、原子力潜水艦の取得は国家政策に基づき決定される事項であり、国防部ならびに合同参謀本部と連携して推進していかねばならないとも述べている。

以前より存在していた原潜開発の動き

 韓国海軍は、1990年代より原子力潜水艦を手に入れようとしてきた。94年には、ロシアの原子炉メーカー「OKBM」から潜水艦用小型原子炉設計製造技術を購入し(100万ドルと言われている)、潜水艦用原子炉の開発に着手した。

 ただし国際原子力機関の承認をクリアする問題などがあったため、潜水艦用小型原子炉としての開発はできなかった。そこで民生用小型原子炉としての開発を進めたが、2000年ごろには潜水艦用小型原子炉の開発に成功したといわれている。

 2003年には、盧武鉉大統領が、原子力潜水艦建造にゴーサイン(ただし非公式に)を出したという。ところが、当時の韓国造船技術陣は潜水艦そのものの建造能力が低く、少なくとも3000トン以上の大きさの中型原子力潜水艦を独自に造り出すレベルには達していなかった。

 その上、「米韓原子力協定」によって、ウラン濃縮の上限が20%に制限されていた。そのため、潜水艦用小型原子炉製造技術を手にしていても、原子力潜水艦の建造に取りかかることはできなかった。