10月2日、北朝鮮がSLBMを発射したことを報じるテレビニュースを見る韓国・ソウルの市民。(写真:AP/アフロ)

(数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官)

 10月2日、北朝鮮がSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を発射した模様です。SLBMは北朝鮮にとって、核兵器の投射手段として当面の最終開発目標と考えられており、北朝鮮は、これ(と核)さえ手に入れれば、アメリカを抑止し、攻撃されることを防ぐことができると考えていると思われます。

 このため、今回の発射は、日本ではそれほど大きく取り上げられていませんが、軍事・安全保障面では非常に大きな意味のあるものです。

 以下では、北朝鮮によるSLBM保有がどのような意味を持つのかを解説します。

報復核攻撃に用いられるSLBM

 冷戦時代、核のトライアド(3本柱)と呼ばれる主な核兵器の投射手段は次の3つでした。

(1)ICBM(大陸間弾道弾)
(2)SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)+弾道ミサイル搭載潜水艦
(3)戦略爆撃機

 ただし、核兵器保有国の中でも、このトライアドを完備しているのはアメリカくらいです。

 航空機での核攻撃には航空優勢が必要で、かつ多大なコストを要します。よって戦略爆撃機での核攻撃は戦闘爆撃機(長距離は飛べない)で一部代替したり、老朽・陳腐化した爆撃機による予備的手段とする国が多い状況です。このため、現代の核保有国の核兵器投射手段は、ICBMとSLBMが主なものとなっています。

 両者は、核戦略上、異なる特質を持っています。まずICBMは、陸上で運用することから管理が容易であるなどの点からコストが低く、数を揃えやすいため、核戦力の主力と言えます。しかし、車両などによる移動式であっても、通常は自国の国土内でしか運用できません。サイロで運用するものに至っては全く移動できないため、偵察衛星などにより敵に把握されやすく、発射前に破壊されてしまうリスクもあります。