今回の福島第一原子力発電所事故は、天災がきっかけとなったものの、企業がバランスシートに保有する資産の中身(つまり東京電力の場合は原子力発電所)が企業の屋台骨まで揺るがすほど企業経営に甚大な影響を与えるリスクを明らかにしました。
近年米国では、企業の持つ資産やその資産を使って行う事業の安全性や環境に与える影響について、敏感になっています。
環境リスクの情報開示
このトレンドに関連する動向として、2010年2月に米国証券取引委員会(SEC)は、投資家保護の観点から気候変動情報の開示を上場企業に求める「解釈指針」を承認しました。当指針によって、米国上場企業は以下の4つの領域で情報開示の検討を求められることになりました。
1) 気候変動にかかわる現行および審議中の法規制の事業への影響
2) 気候変動にかかわる国際協定の事業への影響
3) 気候変動にかかわる規制やビジネストレンドがもたらす間接的な影響(例えば、CO2排出量の多い商品への需要の減退など)
4) 気候変動がもたらす物理的な事業への影響(例えば、海水レベル上昇によって沿岸地域の保険金請求額の増加など)
長年の機関投資家からの要求に応える形で、SECは気候変動情報開示の「解釈指針」を承認しましたが、米国株主の環境、安全性リスクにかかわる情報開示・対策要求は直接企業へも向けられています。
米国株主の要求
ニューヨーク・タイムズ紙(New York Times)によると、2010年に発生したBPのメキシコ湾原油流出事故の影響によって、2011年の株主総会シーズン中に40社以上の石油会社・石炭会社・電力会社に対し少なくとも66件の地球温暖化、環境、安全性関連の株主総会決議案が提出されました。この決議案件は昨年に比べ50%も増えています。