働き方改革で空いた時間を創造的な時間にしたいと考える企業や組織は多いだろう。まさにそれを実践したのが株式会社日立製作所だ。同社では、社員の意識データと行動データをAIで分析したうえで効果的な施策を打ち出すなど、デジタル技術を大いに活用した働き方改革を進めている。その過程でブレインストーミング会議、いわゆるブレスト会議を高度化するユニークなサービス、「CHRO向け働き方改革ブレインストーミング会議/来場型体感サービス」を生み出した。何気ない発言やアイディアをイノベーションにつなげる画期的なソリューションとはどのようなものだろうか。
早くも働き方改革に成功した日立の取り組みとは?
2019年4月1日から順次施行が始まった働き方改革関連法。これを“苦境”と捉えている企業もあるのではないだろうか。なにしろ各法令を遵守するためには、労働時間の管理や賃金制度の見直し、産業医・産業保健機能の強化、多様な働き方を許容する社内風土の醸成……など、取り組まなければならないことは山積。多大なコストとマンパワーをかける必要があるからだ。
だが、真面目かつ熱心に、創意と工夫をもって働き方改革に臨んだ結果、新たな事業・サービスの創出に成功した事例も報告され始めている。その1つが株式会社日立製作所による「CHRO向け働き方改革ブレインストーミング会議/来場型体感サービス」だ。
このサービスについて説明する前に、まずは日立製作所が実施した働き方改革に関する取り組みを知っていただかなくてはならない。
同社では各種データをもとに効果的な人事施策を打ち出す“ピープル・アナリティクス”と呼ばれる手法を実践した。具体的には独自に開発した「生産性サーベイ」と「配置配属サーベイ」、2種のサーベイによって社員の意識を調査。その結果リポートを社員自身やチームマネージャーにフィードバックし、1 on 1 ミーティングでのアドバイスやチームマネジメントのための材料として役立てたのだ。
加えて、このサーベイ結果と社員の行動データ(勤怠や出張履歴など)を掛け合わせて同社の人工知能「Hitachi AI Technology/H」などによって分析したところ、「金曜日の残業が多い人ほど生産性意識が低い」という傾向を発見。そこで金曜日の会議をなくしてスムーズな退勤を促したほか、PCのON/OFFなどをもとに労働時間を記録して働きすぎていないかを細かくチェックするといった施策を実施した。
また「出張や移動が多い人は生産性意識が高い」との分析結果を受けて、モバイルPCの貸与などを通じてテレワーク/リモートワークを推進。会話の相手や時間を記録するウェアラブルセンサーを用いてコミュニケーションの質と量を可視化し、組織活性化も図っているという。
サーベイ結果に基づくマネジメントや各種施策の結果、従業員の生産性意識は大きく向上。さらには残業時間の削減や年休取得の増加も実現。AIによるデータ分析、PCやウェアラブルセンサーの活用など、デジタル技術をベースとした取り組みで働き方改革に成功したわけである。
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