その点について同氏の論文は以下のように述べていた。

「韓国と日本は2016年11月に、北朝鮮の弾道ミサイル発射と通常戦力作戦に関する秘密情報を含めた軍事情報を交換する協定『GSOMIA』に調印した。だが韓国側の人工衛星による情報取得の能力は、南北軍事境界線の南側の領域対象だけに限られている。一方、日本の自衛隊は、軍事境界線の北側の北朝鮮軍の動向を偵察できる偵察衛星数機を保持している。GSOMIAはこうした両国間の情報収集ギャップを埋める協定だった」

 マックスウェル氏はこれ以上は韓国の偵察衛星の能力には触れていなかったが、韓国が現在にいたるまで北朝鮮領内を偵察できる独自の人工衛星を保有していないことは韓国側からの情報でも明らかとなっていた。

断られた偵察衛星の「レンタル」

 考えてみれば、これは驚くべき現実である。北朝鮮は長年、韓国を公然たる敵とみなし、いつでも軍事攻勢をかけられるかのような言動をとってきた。トランプ政権の圧力により最近こそ敵対的な姿勢は後退したかに見えるが、北朝鮮の韓国に対する軍事的脅威は変わってはいない。

 その韓国が、北朝鮮内部のミサイル発射や地上部隊の進撃の動きをつかむ人工衛星を保有していないというのだ。

 韓国の中央日報などの報道によると、韓国政府は2017年8月に、レーダー搭載衛星4機と赤外線センサー搭載衛星1機の計5機の偵察衛星を2021年から3年の間に打ち上げて運用するという計画を発表した。しかし、この計画が完成する2023年まで、つまり2017年から約6年間は、北のミサイル発射の兆候を探知する方法がない。そこで、韓国軍は偵察衛星の「レンタル」というアイデアを思いつき、諸外国に打診したという。

 このあたりの実情は日本でも産経新聞の岡田敏彦記者が2017年9月に詳しく報道していた。韓国政府はイスラエル、ドイツ、フランスの3国に偵察衛星の借用を求めたが、いずれも断られたというのだ。その結果、現在にいたるまで韓国は独自の北朝鮮偵察用の衛星を持っていない。この韓国の態度を、岡田記者は楽観や怠慢が原因だとして批判していた。