高齢者運転の事故は運転手だけの責任か

 私が自動車の普通免許を取得したのは、満18歳になった1966年のことである。勤務する銀行で集金や外での営業などの業務に従事するために必要であった。銀行で乗る車は、スバル360やマツダキャロルなどの軽自動車だった。免許の更新手続きはもうやめたので、現在は免許を持っていない。

 今はほとんどオートマチック車になっているが、当時はそんな車はなく、すべてマニュアル車だった。正確には覚えていないが、自動車学校では、坂道でいったん停止し、半クラッチ状態にして、再スタートするというやり方を教えられた。クラッチとアクセルを微妙に操作する半クラッチは、最初はなかなか難しかった。クラッチを踏みすぎるとギアとの連結がなくなり、アクセルを噴かしても自動車は坂道を急速に下がってしまう。こうならないようにクラッチを操作する技術がドライバーには求められた。

 クラッチをつなげなければギアが入らないので、いくらアクセルを踏み込んでも車は動かない。しかも、ロー、セカンド、サード、トップと順番にギアを変えていかないとスムーズに車は動かない。オートマチック車のように「ドライブ」にセットしておけば、後はアクセルを踏むだけというのとは、大いに違う。一方、オートマチック車には、クラッチペダルがない。あるのはアクセルとブレーキのペダルだけだ。

 マニュアル車では、アクセルとブレーキを踏み間違って暴走する事故など、ほとんどなかったはずだ。ところがオートマチック車では、この間違いによる事故が実に多い。しかもそれは、高齢者だけではない。こんなことは十分に予期できたはずだ。トヨタ、ニッサン、ホンダ、マツダ、ダイハツ、スズキなど、日本の自動車産業が世界に冠たる企業である。便利さを追い求めるだけではなく、もっと事故の起こりにくい車を作ることにも力を入れてもらいたいものだ。