*以下の記事には、新海誠監督の新作映画『天気の子』のストーリーに関する内容を含んでいます。
8月22日の東宝の発表によれば、新海誠監督の新作映画『天気の子』が8月21日までの公開34日間で日で観客動員750万人、興行収入100億円を突破したそうです。これは新海監督の前作で大ヒットした『君の名は。』よりやや劣るものの(公開28日で100億円を突破)、ほぼ匹敵するペースになっています。
実は私は、既に『天気の子』を2回観ましたが、前作の『君の名は。』より海外プロモーションに力を入れているので、日本と世界を含む全体で考えれば前作を超えるヒットになることは確実だと思いますし、そもそも内容の良さで、国内でも、そして海外でも『天気の子』は前作を超えるヒット作になると思います。その理由は大別してふたつあります。ひとつには『天気の子』が『君の名は。』で確立された成功の要因を踏襲していること。ふたつ目には、それに加えて、ここ最近の日本人が意識的・無意識的に感じている閉塞感についての一般人の心象風景を絶妙に表現していることが挙げられます。
そして、特にこのふたつ目の要因は、いま大きな話題になっている対韓国世論(慰安婦合意やいわゆる徴用工問題(正しくは旧朝鮮半島出身労働者問題)等についての韓国政府の対応に端を発する輸出管理や安全保障を巡る対立についての世論)、あるいは「あいちトリエンナーレ」に関する世論の動き、それに対する市井の一般人の感情とも密接に関連しているのではないかと思うのです。
もう少し巨視的に見れば、世界的に頻発している先鋭的な対立の数々、具体的には、激化する米中の対立(貿易問題など)、香港における民衆と当局の対立など、単純な二者の対立とそのどちらかに与しなければならないような息苦しさ、世界中の人が感じている閉塞感への変化球的な表現だったり解になっているような気がします。
以下、ネタばれになってしまう部分もありますが、まずはひとつ目の理由から説明したいと思います。
『天気の子』と『君の名は。』の相似点
『天気の子』は、見方によっては『君の名は。』に非常に似た映画です。それは作品の土台となる大きなテーマが、ともに「失ってしまった大事な人を取り戻す」というものになっているからです。
『君の名は。』には、隕石が降ってきて街ごと消失するというストーリーが盛り込まれていますが、これは東日本大震災がモチーフになっているようです。一度隕石が落ちたところに再度落下するという設定は、歴史的に何度となく押し寄せている三陸沖への津波の暗喩とも言えます。『君の名は。』の初見の際に私はそのことを意識しましたが、知人で、作品のプロデューサーの川村元気さん(『天気の子』のプロデューサーでもあります)が、私の主宰する「青山社中フォーラム」に来て講演して下さったとき、「『君の名は。』は東日本大震災を意識しています」と明言されていました。