以前はLGグループを始め、韓国企業がぎっしり入居していたこのビルは、空き家が目立っていた。ランチタイムに「白領族」(バイリンズー=サラリーマン)たちが、エレベーターホールからゾロゾロ降りてきたが、聞こえるのは中国語ばかりで、韓国語は稀だ。

 地下にある韓国料理店に入ってみた。経営者は韓国人だそうで、店内は大盛況。私は海鮮うどんと、白菜キムチをいただいた。

 隣は珍しく、北京駐在の韓国人グループで、中年男性が昼間からビールを呷っていた。しかもこのご時世というのに、手にしているのはアサヒの生ビールではないか!

 メニューを確認すると、ビールは4種類あって、韓国のHITEが15元、同じく韓国のCASSが20元。日本のアサヒビールは、瓶が20元で、生が25元だった。

 料理を運んできた中国人店員に、「ここでは日韓どちらのビールが人気なの?」と聞いたら、「それは当然、アサヒビールよ」と答えた。ちょっと面喰った私は、「韓国で盛り上がっている『ボイコットジャパン サジアンスムニダ(買いません) カジアンスムニダ(行きません)』は、ここでは関係ないの?」と畳みかけて聞いてみた。すると、「何それ?」と言われた。ちなみに、この店のBGMで流れていたのは、五輪真弓の『恋人よ』だった。

止まらぬ「文在寅批判」

 私は思い切って、アサヒの生ビールを旨そうに飲んでいる中年の韓国人男性にも、「失礼ですが、このご時世に日本のビールを飲むことに、抵抗感はないのですか?」と、恐る恐る聞いてみた。すると酔いも回ってか、韓国人男性の口から飛び出したのは、痛烈な文在寅(ムン・ジェイン)大統領批判だった。

「“文在恨”は、『日本を超える』なんてバカなこと言ってるんじゃないよ。韓国経済は、ようやく日本経済の3分の1まで来ただけではないか。そもそも韓国は1948年の建国以来、国民全体が豊かになったことなんか一度もない。最近、半導体業界が少し調子いいからと言って、うぬぼれるなと言いたい。

 国のGDPの13%をたった1社(サムスン電子)で支えているなんて、おかしいと思わないか。しかも文在恨の政権になってから、隣国の中国とケンカし、日本ともケンカするものだから、財閥の収益も急速に悪化している。LGがこのビルを売りに出すことが、それを象徴しているではないか。それに財閥で仕事していると、韓国にとっていかに日本の存在が大事かを痛感するものだ。

 70年以上前の歴史問題なんて、どうやったって変えることはできないのだから、韓国にとっては未来志向が唯一の選択肢に決まっている。実際、文在恨だって、大統領就任当時は『未来志向の韓日関係を築く』と言っていたではないか。それなのに、いまさら経済大国の日本を捨てて、アジア最貧国の北朝鮮と組もうだなんて、文在恨は、まさに『亡国の大統領』だ・・・」

 この韓国人男性の口からは、文在寅大統領批判が尽きなかった。しかも、恨んでいることを示すため、わざわざ「文在恨」(ムン・ジェハン)と呼ぶのだという。

「最盛期には10万人を超える韓国人が暮らしていた『望京』(ワンジン=北京北東部のコリアタウン)は、いまや2万人を切ってしまった。私も望京に住んでいるが、最近の話題は、『あの人も帰国した』『あの店もなくなった』ということばかりだ。残念なことに韓国は、いまや中国からも見捨てられつつある」(同前)