そしてメコン川の洪水や干ばつは「季節の変化によるもので、長年周辺国の流域住民約6000万人はそのサイクルの中で生活を営んできた」として自然と共存してきたことを強調し、「上流ダムの放水がそのサイクルを変化させた」と人為的な環境変化が中国によってもたらされ、それが生活環境、自然環境を破壊し、損害を与えているとの認識を改めて示した。

 その上で「我々は同じメコン川の水を飲んでいるという中国の主張は必ずしも同じ理解と協力関係を保障するものではない」と中国側の一方的主張に釘を刺した。

メコン川上流を支配する中国、下流域諸国の生命線を握る

カンボジアのカンダル州を流れるメコン川で魚の頭を落とす女性。メコン川下流域の国々では近年魚類資源の激減が報告されており、その原因は上流に造られた中国のダムにあるとの批判も上がっている(2018年1月5日撮影)。(c)AFP PHOTO / TANG CHHIN SOTHY〔AFPBB News

周辺国の間でも対中国で温度差

 中国のこうした「独善的」な主張に基づく水力発電ダムの建設で大きな被害を被っているメコン川流域の各国だが、タイやラオスは中国との外交関係に一定の配慮を示しながらも「流域住民の生存権に関わる」としてメコン川問題に関しては厳しい姿勢を貫こうとしている。

 しかしその一方で同じ下流域にあるカンボジアはMRCのメンバーでありながらフン・セン政権が中国からの多額の経済援助のため「対中弱腰外交」と周辺国から批判を浴びる外交戦略を展開しているため、メコン川問題でも、被害や影響の細かい情報が不明で、特にことを荒立てる構えもみせていない。

 こうしたMRC内部の足並みの乱れも中国側に付け入る隙を与える結果となっているとの見方も強く、「母なるメコンの危機」をどのように回避して、メコンとともに生きる東南アジアの人々の生活と自然環境をどこまで守ることができるのか、流域関係国のみならず、東南アジア諸国連合(ASEAN)全体の問題として対処することが急務となっている。