簡潔な記述ではあるが、北朝鮮当局による日本人拉致事件を「完全に解決せよ」とする日本側の主張を米国政府は支援し続ける、という明確な政策表明だった。

 日本人拉致事件に関して、これまで米国のトランプ政権は事件の解決に向けて日本を支援する意図を表明してきた。大統領自身が国連演説でその事件の悲劇と早期の解決を求めたほか、金正恩委員長との2回の米朝首脳会談でも、合計3回にわたり日本人拉致事件に言及し、その早期の一括解決を要求したという経緯がある。

 これまで米国の歴代政権が政策表明の公式文書に日本人拉致事件解決への支援を明記することはなかった。しかし、トランプ政権は初めて明記することとなった。

 米国政府の日本人拉致問題への対応に精通している日本側の「救う会」の副会長の島田洋一氏は、「米側の支援が政府の政策文書にきちんと書かれた例は、私の知る限り初めてだ。とくに米国政権全体のアジア太平洋地域への安全保障政策の表明という重要な文書に明記されたことは、トランプ政権の東アジア政策の一部に日本人拉致事件解決を位置づけたことの熱意と真剣さを表わす指針として重視したい」と述べた。

 トランプ政権は北朝鮮に完全な非核化を求めている。そうした基本政策の一部に、日本人拉致問題の完全解決を盛り込んでいるという姿勢が明示された。北朝鮮側にとっては、日本人拉致の解決を対米交渉での議題として受け止めざるをえない状況が生まれたともいえる。

来日時にトランプ米大統領が拉致被害者家族と面会したときの様子。(2019年5月27日撮影、写真:AP/アフロ)

「日本支援」明記が北朝鮮へのさらなる圧力に

 なお、国防総省は今回の「インド太平洋戦略報告書」で、トランプ政権があくまで北朝鮮の完全な非核化を求める政策を継続する一方、その要求に応じない北朝鮮は米国とその同盟諸国にとって安全保障上の挑戦であり、脅威であり、さらには無法国家である、という認識を強調していた。その記述は以下のとおりである。