(文:広岡裕児)
(※本記事は2019年5月24日に新潮社フォーサイトに掲載された記事を転載したものです)
欧州議会選挙が、いよいよ5月23日から順次各国で投票が始まった。26日に開票が行われ、27日には大勢が判明する。
各国とも、保守勢力が大崩れし、極右・ポピュリスト政党が大躍進するのではとの見方が強い。結果は判明するまでまだ予断を許さないが、極右・ポピュリスト勢力が国を超え欧州レベルで連携しているかのような印象は確かに強い。
選挙戦もラストスパートに差しかかった5月18日の土曜日、イタリア・ミラノで欧州各国の極右政党党首が集会を開いた。あいにくの雨だったが、会場のドゥオーモ広場は傘で埋まった。
それにしても、「欧州議会選挙」とは名ばかりで、各国で個別に、自国の問題ばかりが語られているなかで、「反欧州派」「EU(欧州連合)懐疑派」「国家主義者」とレッテルを貼られているグループが最も活発に欧州レベルで戦っているのは、実に奇妙なパラドックスと言うしかない。
極右運動はフランスがリードしていた
拙稿『すっかり衣替えしていた仏「極右政党」の変貌ぶり』(2019年5月13日)でも紹介したが、今回の選挙でフランスの極右「国民連合」(RN、旧「国民戦線」=FN=)は「諸国家(諸国民)の欧州」を掲げている。
欧州共同体と単一通貨ユーロに民衆はあまりにも愛着を持っている。それに英国のブレグジットのドタバタは離脱の難しさを見せつけた。いまでもEU離脱を言う少数政党はあるが、敏感に大衆の空気を読むのは、ルペン家伝統の芸だ。
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