しかし、ジョコ氏の勝利の陰で、宗教の2極化が進み、イスラム主義が台頭し始めていることを如実に示す選挙結果となった。
選挙の事前世論調査では、ジョコ氏のリードは約20ポイントあった。しかし、最終的にその差を10ポイントにまで縮められてしまった。
背景には、インドネシアでイスラムの寛容的な伝統や理解が脅かされる一方、ここにきて保守的なイスラム教の考え方が支持拡大されてきた経緯がある。
対立候補のプラボウォ氏は選挙戦で、イスラム推進派と手を組んでいた。
プラボウォ陣営は、「アワス・アシン(外国人に警戒しろよ!)」「ユシ・チナ(中国人を追い出してやる!)」など、外国人排斥や、中国の投資を推進するジョコ氏への批判で、イスラム教徒の復権拡大を訴え、支持を伸ばしていった。
そもそも、インドネシアの政治では存在価値が低かったイスラム推進派。
しかし、今日ではイスラム擁護戦線(FPI)などを中心に政治勢力を形成し、伝統的に穏健派だったインドネシアを保守的なイスラム教国に転換させようとする動きが活発化している。
今回の暴動は、こうした潮流を象徴したものともいえる。
実際、米国のピュー・リサーチセンターが2年前に行った調査では、インドネシアのイスラム教徒の約70%が、「国法をシャリーア法にすることに賛成」とする結果が出ている。
今回の選挙では、プラボウォ氏は、2014年の選挙に引き続いて、西ジャワ、西スマトラ、アチェの3州で勝利したうえに、前回、ジョコ氏に敗れた4つの州を奪還した。