プロローグ/ロシアのアキレス腱
ロシアのアキレス腱、それは経済です。ロシア経済は天然資源依存型経済構造であり、そのような経済構造を筆者は「油上の楼閣経済」と呼んでおります。
もちろん、旧ソ連邦の資源国や中東産油国もこの範疇に入ります。
筆者は「油価がバレル1ドル変動すると、あるいはロシア産天然ガス輸出価格が1ドル変動すると、それはロシア経済にどのような影響を与えるのか?」という質問をよく受けます。
この質問に対する回答は、(ある意味)実は簡単なのです。
さる情報誌は、油価1ドルの変動はロシアの税収に約20億ドルの影響があると報じています。
ではこの数字は正しいのか、また油価・天然ガス価格の変動はロシア経済にどのような影響を与えるのか、検証してみたいと思います。
油価とロシアGDP成長率の関係
ロシア経済は油価に大きく依存しています。過去30年間の油価推移は下記の通りですが、ロシアでは油価が下落すると、必ず何か大きな事件が発生しています。
旧ソ連邦は1991年12月25日に消滅、ソ連邦を構成する15の共和国が独立しました。
当時のM.ゴルバチョフ・ソ連邦初代(そして最後の)大統領とB.エリツィン・ロシア共和国初代(そして最後の)大統領間の個人的確執の中で、ソ連邦は解体されました。
上記は政治的要因ですが、当時油価が1バレル10~20ドルの低水準で推移しており、国庫財政逼迫化がソ連邦崩壊の底流にあることは間違いありません。